京アニ、ジャニーズ、吉本、これらの 話題を中心で日米FTAについての報道がほとんどされていません。
マスコミが報道しないことは今に始まったことではありませんが、有識者や言論人ですら一切口を閉ざしているように見受けられます。
「日米FTA」という言葉を使っていたとしても、全く問題の本質についてはスルーといった形を取っているようです。
また、最近MMT(モダンマネタリーセオリー、現代貨幣理論)がマスコミに取り上げられるようになりましたが、ある時期を境にマスコミが報道するようになったことと、日米FTAの為替条項はどうやら無関係ではありません。
TPP発効、日欧EPA発効にしてもそうですがマスコミがろくに報道することはありませんし、発効後の法改正はもちろんそれ以前の法改正も基本的に各種自由貿易協定に則った法改正であることに気付かなくてはなりません。
言論人はTPP単品、日欧EPA単品、RCEP単品については話してくれますが、一般の日本国民に対するそれらの複合的な影響については、全くと言っていいほど話されないのです。
民主党政権時代から自民党のTPP交渉参加の時期ぐらいまでは株主資本主義批判、や新自由主義批判、行き過ぎたグローバリズム批判として話していいましたが、それから一切聞かなくなりました。それも言論人が同時期に一斉に。
私はこの為替条項とMMTの関係をここのところずっと考えて、色んな方から意見を聞いてみましたがやはり確実に無関係ではないと、以下の理由なども含め考えるようになりました。
「MMTが急にマスコミに報道されたこと」
「日米FTA、為替操作禁止条項について誰も触れないこと」
「言論人がTPPやEPA、RCEP、FTAAP、新WTOについて一切触れないこと」
というわけで今回の記事ではこのあたりを考えてみたいと思います。
TPPから日米FTA
日米FTAとは日本と米国の二国間貿易協定ですが、元々米国はTPPに参加することが既定路線になっていましたが一昨年に離脱しました。
これは、米国としては当時のTPPの内容や大衆に対するパフォーマンスから離脱を決めたということだけのように思えます。
というのも、それ以前から経団連は新WTO構想について公表していましたし、日米FTAの妥結、その後のFTAAPに合体することを見越しているのであれば、別にTPP参加を急ぐ理由は全くなくなります。
多角的自由貿易投資体制の再構築を求める -TPPの先を見据えて-
ご存知の通り、TPPは中身が全くわかりませんし、国民に対して知らせれておりません。
その上、法案は企業のビジネスマンが作成するということになっています。
当然ISD条項も含まれます。
TPPもその他の自由貿易協定も憲法違反であることは間違いありませんが、裁判所曰く、TPPは憲法違反ではないという判断です。
TPP交渉差止・違憲訴訟控訴審判決 「くらしの問題」として今後も主張を継続
失うだけの日米FTA―飛んで火に入る夏の虫(東京大学教授 鈴木宣弘)
日米FTAは詰まるところ、新WTO(NWO)を到達点とするTPPや他の自由貿易協定の予備協定、予備協定と言っても米国だけで他の自由貿易協定から優越する内容である可能性が否めないわけです。
なぜなら、我が国は米軍基地もあれば日米安保条約、日米合同委員会もある事実を踏まえると、占領中の状態ですからさもありなんという話にもなります。
そしてここで日本の憲法改正議論が盛り上がってきたとなれば、成立するであろう「緊急事態条項」もこれらを踏まえた運用にならざるを得ないことになります。
為替条項の中身
「為替条項」というのは独自の金融政策から通貨安誘導をしない、させないといった取り決めです。
これが成立すれば日本は独自の金融政策は打てなくなります。
これまで、アベノミクスと称し極端な円安誘導をしていたことが問題視されたのでしょう。
しかし、この為替条項の本質は金融政策はおろか財政政策までも日本独自の判断をさせないことにあります。
と言うより、金融、財政政策は米国利益、つまりワシントンに影響力のあるウォール街や多国籍企業にとって利益にならない政策はできないと言った方が正確かもしれません。
為替条項とMMT
私はMMTそのものを非難するつもりはありません。
しかし、このMMTが日本国民を豊かにしない運用がされることについては非難、批判されるべきと考えます。
MMTが事実に則した正しい理論であることと、MMTが国民の利益に寄与する運用がなされることとは全く次元の違う問題です。
MMTの第一人者であるステファニー・ケルトン教授は、「金融政策は財政政策に協調的に行動するようになるだろう」と述べています。
ケルトン教授、金融政策は財政政策に従属的な存在へ-インタビュー
MMTでは乱暴な言い方をすれば金融政策は財政政策と不可分であるとの認識です。
日銀副総裁の岩田規久男氏のように貨幣をマネタリーベースと定義せず名目GDPを貨幣と事実上定義しています。
中野剛志氏の説明は以下の動画を御覧ください。
MMTは銀行の信用創造にも触れた事実を言っています。
しかし、財政政策の従たる存在が金融政策ということになれば、考えるまでもなく日米FTAにおける「為替操作禁止条項」は「財政政策」にも影響するということになります。
為替条項ではこれまでのように金融政策を独自に行うことを禁止する内容でありますが、もし、MMTを前提に為替条項が批准されれば、財政政策そのものが金融政策になるということになりますので、日米FTAを締結する以上、独自の財政政策すら行うことができなくなります。
独自の財政政策を行えないということであれば、財政政策を行う場合、日米の交渉や国内、国外の議論を行いそれを吟味してということになるでしょうし、もしインフラ等の財政政策を日本が独自に行った場合、ISD条項が発動される事態になる可能性も出てくることになります。
MMTは米国利益の経済政策に寄与する
果たして、米国が「日本国民の為の財政政策」を認めることはあるでしょうか?
その日本国民の為の財政政策が米国の利益に反する場合、ひいては多国籍企業やウォール街の利益に反する場合、日本国民の為の財政政策が積極的に行われるのでしょうか?
仮に、防災対策や道路建設等のインフラが行われたとして、それは政府調達の領域ですから内国民待遇及び一般競争入札ということになれば体力のない日本企業が落札することは不可能であるばかりか、多国籍企業が儲けるだけ儲け、その儲けは、タックスヘイブンに行き、日本国内に循環しないことになるでしょう。
だとしたらデフレを促進することも含め日本国内のインフレ率も上昇しないであろうことは言うまでもありません。
その上、建設された道路等のインフラはコンセッションとして運営されることは想像に難しくないでしょう。
仮にそうだとしたら日本国民の生活は良くてさほど変わらない、普通にインフラ利用料がのしかかり生活が苦しくなることは起こり得るだろうとなるでしょう。
反論としてTPPとMMTは関係ないといったこともあるでしょうが、米国がMMTを利用して自国の利益をゴリ押しするといった交渉をしないとは限りません。
大体、米国追従の政権がそれを受け入れない可能性はあまりにも低いと言わざるを得ません。
また、例えば山本太郎のような一議員に為替条項の撤廃を働きかけたところで山本太郎自身がTPP反対に消極的になってきているところを踏まえれば、彼の打ち出した政策は”結果として”リップ・サービスで終わります。
となれば外資の言いなりの日本マスコミがMMTを報道するというのにも合点がいきます。
少なくともMMTを利用したい勢力が存在するということです。
したがって、日米FTA、TPP、日欧EPA、RCEP等の自由貿易協定の脱退ないし反対しない、MMT推進はあまり意味がないことにもなるでしょうし、最悪の場合、日本国民にとっては不利益、有害になる可能性すらあるということになります。
まとめ
これは、私の見解ですので実際には蓋を開けてみるまではどうなるかはわかりません。
MMTを推進する人たちは良識派であり我が国のことを真剣に考えている有志が多いことは事実です。
しかし、MMTの正しさを追求するあまり他の方に視点が向かなくなってしまってはいないかと感じたのでこの記事で書かせてもらいました。
少なくともこういった考えもあるかもしれないぐらいに考えていただければ幸いです。
ただ、学問で世界が動くわけではないことも事実ですのでそのあたりも踏まえてお考えいただければと思います。
ここで今や有名なTPPが日本と韓国を長期的に潰すために行うとした米国公電をWikiLeaksが暴露したことを思い出しておきたいところです。