浜田宏一教授は素晴らしい経済学者だった

アベノミクスの3本の矢であった「異次元の金融緩和」「機動的な財政出動」「成長戦略」の中身は、これまでを見る限り金融緩和は量的緩和政策として250兆円のマネタリーベースの拡大は本当によくやりましたが、

財政出動の中身は、「緊縮財政」、成長戦略は「規制緩和といえる構造改革」でした。

当初の成長戦略はスパコンやロボットなどに対する投資の拡大を促すとしていました。

財政出動もグラフのとおり公的固定資本形成はほとんどしていないと言える状態です。

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出典:高齢社会白書

繰り返しになりますが、デフレはスティグリッツ教授の言うとおり、「需要の不足」です。

しかし、政府は金融緩和をすればデフレは解消できる、つまりデフレは「貨幣現象」であり、マネタリーベースを拡大すればデフレ脱却できるという説に与していました。

このデフレは貨幣現象という主張を貫いていたのがいわゆるリフレ派の総帥とも言える内閣官房参与であり、イエール大学名誉教授の浜田宏一氏でした。

ところが、浜田宏一氏は以下の記事でそれが間違いであったことをお認めになったのです。

『アベノミクス4年 減税含む財政拡大必要 内閣官房参与 浜田宏一氏

http://www.nikkei.com/article/DGKKZO09531030U6A111C1EE8000/

私がかつて『デフレは(通貨供給量の少なさに起因する)マネタリーな現象だ』と主張していたのは事実で、学者として以前言っていたことと考えが変わったことは認めなければならない」

「金利がゼロに近くては量的緩和は効かなくなるし、マイナス金利を深掘りすると金融機関のバランスシートを損ねる。今後は減税も含めた財政の拡大が必要だ。もちろん、ただ歳出を増やすのではなく何に使うかは考えないといけない」

とのことでした。

つまり、今の日本では、量的緩和政策ではデフレ脱却できず、それを達成するには財政出動を増やすことが必要であるとお認めになったのです。

政府が国債発行をして財政出動をし、需要を創出しなければ、デフレ下では民間は投資や消費を抑えることが合理的な判断となるためにデフレは脱却できないと、このブログでも他のブログでも書いてきました。

私は、浜田宏一氏もその辺の専門用語を駆使して一般人を煙に巻くことを生きがいとする多くの経済学者と同じように見ていたので、これは大変失礼なことであったと反省しています。

これほど、素晴らしい肩書をお持ちなのにも関わらず、自分の間違いを認めることができるということは、誰にでもできることではありません。

メディアに出てくる知識人や評論家と称する人間が自分の間違いを正したことがあったでしょうか?

責任を取ったことがあったでしょうか?

することと言えば、認知的不協和と言い訳がましく自己弁護を繰り広げた人間しか私の記憶にはありません。

経済学者の言うことを聞いて、その理論を現実に当てはめた結果、失われた20年という言葉が生まれたことを経済学者は恥じるべきだと私は思います。

しかし、この浜田宏一氏は非常に勇気のある方だと思います。

自分の理論が間違っていないと主張することはいくらでもできたはずです。

これまでの知識人のように。

私はこのような心の強い人間になりたいと感じています。

ついでにいわゆる国の借金についても以下のように仰っています。

政府の負債である公債と中央銀行の負債である貨幣は国全体のバランスシートで考えれば民間部門の資産でもある。借金は返さずに将来世代に繰り延べることもできる。リカードの考えでは公債は将来の増税として相殺されてしまうが、そこまで合理的な人はいない」

リカードの公債中立命題のことを言っていますが、公債中立命題とは、財政政策で政府が需要を創出しても、国民は「将来、増税される」と考えて、消費や投資を減らしてしまうので、財政拡大は意味がない。といった、経済学者たちの、”いつもの”不可思議な共通命題です。

普通に考えてそんなやついるかという話ですが、彼ら経済学者は本気で信じているのか、単に言い訳を繕うために堅い言葉を作り理論を咬ませて自己弁護を図ろうとしたのか知りませんが、現実にあると思っていたのです。

これから、我が国の総需要が増えていくことを期待して今日は、ゆっくりお酒でも飲もうかと思います。

非常に嬉しい出来事でした。

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