民法大改正は日本の隷属化を強化する

平成32年に施行が予定されている民法大改正をご存知でしょうか?

かつて新会社法が施行されたときは、資本の権限が強まり日本企業は「所有と経営の分離」を合言葉に外資の食い物にされました。

株式交換等の規定から企業買収をしやすくなったこともあり、資本移動の自由を前提とした日本企業の切り売りが始まったのです。

果たして今回の120年ぶりとなる大改正はどのような結果をもたらすのでしょうか。

この記事では、現時点で把握できることを前提にこの民法改正がどのような影響を与えるのか考えてみたいと思います。

改訂の該枠

「債権法、契約一般が改訂の中心となっている」

「条文中心から当事者間の契約内容を重視する方向に変わる」

「条文主義から判例主義へ移行」

 

といった具合になっています。

債権法、契約という経済活動の領域であるということです。

ポイントとしては、以下の規定の内容が変わります。

詳しい説明は省き概要の変更点を書きたいと思います。

詳しい説明はある弁護士先生の動画を貼っておきます。

消滅時効

時効開始の起算点に「主観的起算点、客観的起算点」という考え方を採用

業種による短期消滅時効の年数の長短はなくなり、5年または10年に統一される

法定利率

固定性から変動性へ

改正前

民事法定利率5%

商事法定利率6%

改正後

いずれも3%

解除

軽微な債務不履行の場合は解除できない。

無催告解除ができる場合の明文化。

契約解除に債務者の帰責事由は不要になる。

保証

事業目的の保証契約には公正証書による手続が必要になる

約款

明文化される

消費貸借

要物契約であることは維持した上で、諾成契約を認める

敷金

明文化される

担保としての敷金

 

ポイントは以上ですが、他にも債権者代位権や詐害行為取消権など多くの改正点がありますが、専門的になりすぎても仕方ないので興味のある方はお調べになってください。

改訂の目的は国際化

改訂の該枠は以上の通りですが私は非常に違和感を覚えます。

例えば、「判例主義への移行」ということには司法の裁量が過大になりがちになるはずです。

というのは、法とは「解釈」によって運用に変更を加えることができる非常にあやふやのものだからです。

未だに法解釈の学説の争いがありますし、我が国でも憲法9条の解釈云々でいつも揉めております。

法解釈とはどのようなものか

イギリスのような憲法がなく、判例主義を採用しているのは憲法がないというよりかは、明文化されていないという意味合いが強いのです。いわゆる「不文憲法」です。

イギリスでは法律的な紛争が発生した場合、過去の判例をルールとして紛争を解決するのが通常です。

日本もこれに近づくということなのかということです。

そもそも改正の大義名分は、

「国際的に通用する民法」

 

「分かりやすい民法」

 

ということのようですが、実態は簡素化したということにした上で運用し、これまでよりも司法が自由に法解釈を拡大することで、イギリス、アメリカの慣習に近づけるという目的だと断定できます。

なぜなら日本政府あるいは日本人が「国際」「国際的に」、「グローバル」、「グローバルスタンダード」と言う時、それは常に「アメリカ追従」のことだからです。

更に、非常に驚愕したことはこれまで「消費貸借契約」は要物契約(物の引き渡しを以って成立する契約)とされていましたが今回の改正で「諾成契約」(諾成的消費貸借契約)が明文化されたのです。

つまり、書面による契約の場合に限るといった規制はあるものの、意思表示で諾成的に消費貸借契約が成立するとなってしまったのです。

事実上、実務において金銭の授受前に契約をしていることはよくあることではありますが、電磁的記録や書面を偽造したり変造したり、捏造したりといった恐れは無いのでしょうか。

民法改正にもグローバリズムの影

例えば、日本人がたまたまアメリカに行って契約を結んできたから、その契約において紛争が生じた場合はアメリカの法律で審理するということになったり、逆の場合も同じように実に恣意的な状態になってしまうことを避ける為に、ある程度は国際間の取引には一定のルールやガイドラインが必要であるという要請はあるかと思います。

もちろんそれは合理的な考えですし、私も必要だと思います。

しかし、「そのルールを誰が作るのか?」という課題が残ります。

先進国、OECD諸国などが協議して決めれば良いじゃないかという意見もあるかと思いますが、そこには必ず「」の論理が働きます。

つまり、我が国が「合わせる」しかないのです。

グローバルスタンダード」、「ルールの統一化」という言葉で隠す日本人の「負け惜しみ」と「強がり」です。

民法大改正は年次改革要望書と同じ意味合いである

我が国は冷戦終結以来、日米構造協議、年次改革要望書とアメリカ側からの法改正の”要請”を受け入れて来ました。

以下がそのまとめです。

年次改革要望書

アメリカ追従路線はもう成り立たない

年次改革要望書の要求どおりに成立した法案から引用

ーーーーーーーーーーーー引用ーーーーーーーーーーーー

・人材派遣の自由化   → 99年:労働法改正

・大店法の廃止     → 00年:大店法の廃止

・司法制度改革     → 02年:弁護士業自由化、04年:法科大学院導入

・アメリカ型経営形態導入→ 03年:商法改正

・外国企業の日本参入  → 05年:新会社法成立

・会社合併手続きの簡素化→ 05年:新会社法成立

・保険業の自由化    → 98年、05年:保険業法改正

・郵政民営化      → 05年:郵政民営化6法案成立

・独占禁止法の強化   → 05年:独占禁止法改正

・医療制度改革     → 今後?:自由診療拡大

ーーーーーーーーーーーー引用終わりーーーーーーーーーーーー

これらの法改正の結果どのような影響が我が国に起こったかはご存知かと思います。

そういったことがまた起こらないと誰が言えるのか。

今回は、「民法」という大局的な私法のそれも「一般法」の大変革です。

まとめ

今回の法改正がどのような影響を我が国に与えるかは未知数です。

大局的な私人間のルールを定める一般法が英米式になるということは、我が国の「信義則」も英米式になっていくと推測できます。

それが、欧米への隷属の強化と言わずして何と言えば良いでしょうか。

誰か知識人がそういったことに留意していると言ってくれればまだマシですが、そういった法律家や知識人が見当たりません。

先日、警察官が同僚の警察官を支給されている拳銃で射殺するという事件がありました。

警官撃たれ死亡 19歳巡査を殺人容疑で逮捕、滋賀

いよいよここまできたかというほど我が国は壊れていっています。

こんなアノミー化しつつある現状の日本で法律の改正などなんの意味があるのかとも思いますし、我が国が本質的に法治国家ではないということがわかっても、それでも法を守ると意識は人間が人間である以上必要な規範意識です。

アノミーWikipedia

現実社会では、知恵のあるフリをしている獣の集団が人間社会を構成しています。

今の日本はサファリパークで、そこを支配しているのがアメリカ並びにアメリカを支配する個人や企業、組織でしょう。

その管理者がやる気をなくしてきているのかもしれません。

もう用済みであると…

参考

民法大改正ガイドブック

法務省

法務省ー民法の一部を改正する法律(債権法改正)について

 

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