プライマリーバランス黒字化目標で国民が”貧困化”する

財政健全化」、「プライマリーバランスの黒字化目標」

最近とてもよく聞く言葉です。

基礎的財政収支をプラスにするということですが、なぜ基礎的財政収支をプラスにしなければいけないのかの前提が「」で成り立っていると私は考えています。

この記事ではその辺りを考えてみたいと思います。

財政健全化の詭弁

財政健全化はプロパガンダ専門省庁で名高い「財務省」が

主導している活動です。

http://www.mof.go.jp/comprehensive_reform/gaiyou/03.htm

やっぱりうまい財務省〜プロパガンダの知恵〜

共通通貨国と比較しているところに嘘がある

上に貼った財務省のリンクの中の説明では、自国の独断で発行できない共通通貨ユーロを使用している国と比較をしています。

我が国は自国通貨建てで国債を発行していますので、中央銀行である日本銀行が買い取ればそれで政府債務は事実上解消されます。

しかし、ユーロ加盟国というのは独断で金融政策も打てなければ財政政策も打てません。

ユーロは欧州中央銀行が発行しているわけですから、ギリシャ国債を買い取ったとしてもそれは単なる欧州中央銀行のギリシャに対する債権でしかありません。

欧州諸国のような財政危機の発生を防ぐために”と財務省は言っていますが、そもそも前提も条件も違うので欧州諸国のような財政危機は現段階で起こりようがないのです。

そもそも我が国の財政危機が近いのであれば何故、我が国の長期金利は世界最低水準なのでしょうか?

リスクのある国債は必ず金利が上がります。

リスクを一番嫌う日本国内の銀行が”紙くずになるかもしれない日本国債”を大量に買い漁っていた事実はどう考えるのでしょう?

また金利が上がるということは、借り手が増えて資金需要ができたことの結果です。

つまり、投資や消費が増えデフレ脱却(景気回復)の兆候となるのです。

一日にはこんな記事が出ていました。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASS0IMB04_R00C17A5000000/

これはGWということもあり市場参加者が少ないのもあると思いますが、

市場から国債(十年債)が尽きている」のではないかと思います。

政府が新発国債を発行しないことで市場の国債がなくなっているのでしょう。

よくよく考えてみると、いわゆる財政破綻(デフォルト)すると言われている国債がなぜ市場からなくなったのでしょうか?

もちろん量的緩和政策ですね。

日本銀行が金融機関保有の国債を買い取り続けました。

金利は上がるどころか、マイナス金利導入という状態であり、ついでにインフレ率も日銀のインフレターゲットには程遠い状況であることは周知の事実です。

日本銀行の国債保有分は財投債合わせて370兆円ほど、民間銀行の保有分は200兆円ほどとなっています。

2016年12月の時点でこの数字ですから現在はもう日銀保有分は400兆円になってるでしょう。

そうだとしたらこの現実が何を意味しているのかということになりますが、それは、

「量的緩和政策は近い将来強制終了する」

ということです。

当たり前ですが市場に国債が出回っていない以上、また、金融機関に保有されている国債がない以上、日銀が買い取ろうにも買い取る国債が無いのであれば、国債買取による金融緩和は終結せざるを得ません。

そして、その時に「プライマリーバランス黒字化目標」が存在していたら、我が国は100%デフレ脱却ができなくなるのです。

プライマリーバランスの黒字化”ということは、政府債務を”減らす”ということです。

反対に、国債発行をすることはプライマリーバランスの赤字化を増やすということになります。

このグラフを使って財務省は以下のように述べます。

財政健全化のために、我が国に残された時間は多くありません。現在、日本国債の93%は、潤沢な個人金融資産に支えられ、国内投資家が保有していますが、債務残高の増大と貯蓄水準の停滞により、この環境が変化する可能性があります。」

しかし、財務省は、国民を誘導する目的から決定的なミスを犯しています。

まるで青いグラフが赤いグラフを越えてしまいこれを越えたら国債発行が出来なくなると言わんばかりのコメントをしています。

「政府債務が家計の金融資産を越えることはあり得ません」

説明します。

政府債務というのは国債のことです。

政府は国債を売って資金を調達します。

政府はその資金をどうするのでしょうか?

当然”使う”です。

現金や預金で残しておくなどということはあり得ません。

その使ったお金はどこにいくのでしょうか?

国債は基本的に、建設国債と特例公債の二種類です。

橋や道路を作る際は建設国債で調達した資金から、税収の穴埋め分は特例公債で賄われます。

橋や道路は誰が作るのか?

もちろん建設会社です。

建設会社は民間の企業です。

橋や道路の建設代金は企業に政府から大抵の場合、政府小切手で支払われます。

建設会社に支払われたお金は誰の手元にいくのでしょうか?

給料という形で、「家計の金融資産」となるのです。

当たり前です。

特例公債に関しても同じです。

政府最終消費支出の赤字分の穴埋めですから民間にお金が回るのです。

ここから分かることは、「政府債務の増加は民間への所得移転」ということになります。

したがって、財務省の主張する(家計の金融資産を政府債務の総額が越えたら破綻する的な言説)ことは「起こり得ない」のです。

厳密には財務省が「家計の金融資産を政府債務の総額が越えたら破綻する」とは言っていませんが、そう思わせるように、「債務残高の増大と貯蓄水準の停滞により、この環境が変化する可能性があります。

とどっちでもないようなことを言って国民に対し「漠然とした不安だけを残す」という書き方をしています。

このような言い方をしているということは、財務省はここで説明したことを理解している可能性が極めて高いです。

何故なら、財務省の主張が正しいならこのような曖昧な言い方をする必要はなく断言すれば良いはずですし、読み手の不安を煽るというプロパガンダ手法を使う理由はありません。

プライマリーバランスの黒字化は国民の貧困化

プライマリーバランス黒字化目標をデフレ下でそれも短期で行うということは端的に言えば、

「”政府債務を減らす”」

ということです。

基礎的財政収支ですから、政府の金の出と入のバランスを、「入と出を一致させる」となるようにしようということです。

それが達成された場合、我が国の経済環境はどうなるのでしょうか?

我が国は”デフレ”です。

デフレは”需要の不足”です。

プライマリーバランスをデフレ下で短期に達成しようとすればやるべきことは限定されます。

それは、

「これまでと同じこと」

つまり、

「緊縮財政」

具体的には、

「消費増税と社会保障の削減」

となります。

政府は税率は変えられますが税収は、簡単には変えられません。

経済成長をせずに、プライマリーバランスを黒字化するには、企業で言うところの「コストカット」をするしかないのです。

政府が企業のようになっているのです。

しかし、企業は営利団体ですが、政府は非営利団体つまりNPOです。

存在意義を疑うレベルの政府の変貌ぶりです。

消費増税をすればますます、消費が減ります。

企業も投資をしなくなります。

この事実はデフレを20年続けた過去の歴史が証明しているのです。

するとどうなるか?

”需要がなくなる”

ということです。

消費が減るということは、「今生きている世代の貧困化」を生み、投資が減るということは、

将来世代が貧困化する」ということです。

現在私達が、下水を使い、電気を指一本で使い、ちょっと出かければ食料も手に入り、車を使い、道路を使いと、常日頃当たり前になっているものは、「過去の日本人が投資」をしたからです。

その投資をしないということは、「未来の日本人を見捨てる」ということと同義です。

未来の日本人は現代生きている日本人をこう思うでしょう。

「最低の国民だ」

と。

そりゃそうです。

自分達は先人の投資のお陰で豊かに生きているのに、その世代は自分達のことしか考えない連中だと。

とは言っても民間が消費を減らし、企業が投資を減らすのもまた当然の選択です。

通貨発行権と徴税権を持つ絶大な権力を持つ政府が、

「消費も減らすし投資も減らすからよろしこ」

となっているわけですから、出来ることなど限られています。

「声を上げる」か、「他人から奪い取るか」

です。

後者の方をこれまでの20年間行ってきたのです。

GDPという全体のパイが増えていない以上、他から奪うしか所得を増やす術はありません。

「他から奪う」という意味は、「他の人の所得を下げる」という意味です。

レントシーキングは正に典型的な「他から奪う」行為です。

しかし、こういうことを言うと競争社会なんだから当たり前だとよく言われますが、ではその

競争社会」なのに経済成長しないのは何故でしょうか?

この世界が競争社会であることは多くの人が理解していますし、私も全否定するわけではありません。

全否定すればそれはソ連のような生産性の低い国になるでしょう。

私は行き過ぎていると考えているだけです。

競争社会←〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇→競争しない社会

我が国の状態は、〇の位置の左から1番目の辺りにあるのではないかと危惧しているだけです。

どこに位置するかは、国の事情で違いますし、民主主義であればそれこそ国民が決めれば良いという話です。

デフレ下の競争社会と経済成長を達成している競争社会では、国民の豊かさは全く違うのです。

競争社会でも全体が豊かになり仕事も増え、給料も増え、好きな物が買え、結婚し、子どもを作り、家を買い、とそれができれば競争社会だろうが、多くの人が肯定するでしょう。

それが出来るのは「需要がある」からだということです。

将来自分の所得が上がらないと考えたら、人は頑張って仕事しようとは考えなくなります。

バブル世代が若い人を扱きおろす光景をよく目にしますが、景気が良く所得も毎年上がるという時代を経験したことがない人間に、「欲がない」とか「根性がない」とか言うのは余りにも思いやりがないと感じます。

政府の公共投資で需要を創ってもらっていた当時の状況とは全く違うのです。

この先給料が上がらないと考えた人間は大抵以下の選択をします。

「現状維持」

「何とかして自分の所得を上げよう」

「適当にやろう」

概ねこれらのどれかです。

だいぶ話が逸れましたのでプライマリーバランスの話に戻します。

プライマリーバランスの黒字化をすることで国民が貧困化するということはご理解いただけたかと思います。

一言で言えば「デフレ化」するということです。

ずっと同じことを繰り返しているだけです。

「財政支出を減らさないと財政破綻する」

するわけがありません。

日本国債は100%自国通貨建てです。

デフレで貯蓄過剰なのですからほぼ国内から購入されます。

中央銀行が買い取れば実質政府債務は消えます。

実際、これまでの量的緩和政策で消えています。

政府は日本銀行に返しても良いし返さなくても良いのです。

「自国通貨建ての国債なら無限に発行できるのか」

よくある反論ですが、国債の発行制約は、先ほど説明しましたが家計の金融資産があるからではありません。

国債の発行制約は「インフレ率」です。

政府支出を拡大して公共投資を行えば確実にインフレ率は上昇します。

同時に通貨供給量も増えるので間違いなくインフレになります。

インフレターゲットを予め決めておけば良いだけの話です。

デフレである以上は公共投資をどんどん行えばよいということです。

よくある議論をまとめました。

「公共投資を拡大すると金利が上がる」

別にいいじゃないですか。

金利が上がるということは、資金需要が上昇して消費や投資が増えていく兆しなんだから。

金利が上がることを恐れるなら、じゃあまた日本銀行が国債買い取ればそこでもうチャラになるので何の問題もありません。

「財政拡大をするとハイパーインフレになる」

年間13000%のインフレ率を達成できるほど我が国の供給力は脆弱ではありません。

そもそもそこまでの財政支出の拡大をするとは誰も言ってないはずです。

当然インフレ率を確認し、景気が過熱したら増税なり金利を上げるなりすれば良いだけです。

この論は藤巻健史氏あたりがよく言いますが、これは

「公共投資をすれば少なくとも”インフレ”になる」

ということを認めていることになります。

自己の恥を捨て、繰り返し極論を言って、国民の恐怖を煽る典型的なやり口です。

「無駄な公共事業をして意味があるのか」

公共事業=無駄というイメージはマスコミが作ったものです。

公共事業は100%無駄ではありません。

何故なら、私はその無駄とされる公共事業で出来たものを利用して生きているわけですから。

道路を使わない国民はほぼ0です。

ほとんど人の通らない道路は無駄じゃないかとよく言われていますが、そんな時は

「もう震災の状況を忘れたのですか」

と言うようにしています。

ある地域に行くためには橋を必ず渡らなければいけないという場合に、ほとんど人や車が通らない橋は無駄になるのでしょうか?

よく使われている橋が自然災害で壊れた時、橋の向こう側の人達は当然「物資が運ばれてこない」という状況になるでしょう。

そんな非常事態のときに、普段使われない橋がバックアップの役目を果たすのです。

堤防も同じです。

津波が来なければ、それは無駄なのか?ということです。

来るかもしれないから作る「国民の命を守る保険」なのです。

日本国民は保険好きと言われますが、あくまで「個人」であって「公共の保険」には関心が薄いようです。

仮に完全に無駄な公共投資があったとしても、現在はデフレですから、100%無駄でもデフレ脱却に方向にはいくので”デフレ下”では無駄でもやるべきです。

あくまでデフレ脱却が目的なのですから。

本当に無駄であればインフレになってから公共投資を削減するなり、民間に売却するなりすれば良いのです。

もちろんインフレの時は無駄な公共投資はインフレ率を余計に上昇させるのでやるべきではありません。

要はインフレ率で決定するべきだということです。

財政健全化はデフレ下では百害あって一利なし

これまでを見てきたようにデフレ下で財政健全化、プライマリーバランスの黒字化目標を達成しても、国民にとっては百害あって一利なしなのです。

「一利」は財務省と、デフレを望む者達でしょう。

デフレ経済でメリットを受ける者とは誰なのか?

デフレ脱却をしなければいけない

→日本はもう成長しない

デフレ脱却には公共投資が必要

→財政がー

国債は日本銀行が買い取れば終わりじゃないか

→ハイパーインフレになるー

こんな風に財務省の思うがままになってきたのです。

もう財務省の言うことを信じてはいけません。

嘘をつき過ぎました。

この嘘を”事実”にするか、”嘘”とするかは国民次第かと思います。

そもそも負債とは”レバレッジ”です。

誰かが負債を増やすことで経済成長するのです。

アルゼンチンはプライマリーバランス黒字化目標を追求し財政破綻となりました。

イギリスやフランスはプライマリーバランス黒字化目標を破棄、延期等を決定しています。

以下の動画をご覧になってください。

藤井教授はご存知の方も多いかと思います。

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