”欲しいものが無い”は本当か?

我が国は、長らくデフレーションという経済環境に陥っています。

これまでデフレ脱却、経済成長を唱えてきましたが、未だにデフレは脱却出来ていません。

なぜデフレを脱却できないのかと語られる時に、必ず聞く議論があります。

それが、

「欲しいものがないからデフレを脱却できないんだ」

とか

「成熟社会だから成長は望めない」

といった類の議論です。

この記事ではこのような議論が本当に正しいのか、実際にそういったことはあるのかということを考えてみたいと思います。

デフレが長く続くことの影響

デフレというのは「継続的に物価が下がること」です。

なぜデフレになるのかと言えば、

「バブル崩壊後に借金返済や貯蓄のために消費や投資に回るお金が減るから」です。

この時、国民全体がの所得が下がることで「物やサービスを買う力」が減少するということになります。

20年以上デフレが継続しているということは、現在の25歳から30歳くらいの人達は、我が国の

景気が良い」という状態を知りません。

教科書で高度成長期は学ぶはずですが、実際に体験するということはしていません。

逆に、デフレであるために「物やサービスがない」という状態も生まれてからこの方経験してないはずです。

これは何を意味するのでしょうか?

デフレの場合、民間は消費や投資を抑え、所得を「貯蓄」に回す傾向が強くなります。

それがデフレ期の合理的な選択だからです。

ところがその民間の合理的な選択は、社会全体にとっては合理的ではありません。

なぜなら、デフレは「総需要の不足」であるので、誰かがお金を使って物やサービスの購入をしなければデフレ脱却の方向には向かわないからです。

全体にとって合理的な選択が、個人にとっての選択としては合理的ではないという状態が発生するのです。

これがいわゆる”合成の誤謬”というものです。

お金を使わないことが合理的」、「節約が善」という意識が20年以上も続いているということになります。

その心理を掘り下げると、そこにある民間の感情は「不安」からくるものだと言えるでしょう。

例えば、毎月、それも明日100万円入るという予定があれば、大抵の人は今日1万円を節約しようという選択はしないはずです。

ですが、明日クビになるかもしれない、明日の給料ちゃんと振り込まれるのかな?などと自分の生活について不安に思えば、やはり節約、この1万円は使えないという選択をしてしまうはずなのです。

しかし、人間はそれでも「慣れ」というものがあります。

この場合、「麻痺」の方が適切かもしれません。

デフレが長らく続き、「お金を使うことは悪いこと」「節約は善」「安くて良いは当たり前」といった意識が続き、同時に給料が上がらないことを前提として考えるようになるのです。

給料が上がらない苦しみより、失業していないことを自分が恵まれていると考えるような、言わば

下を見て生きていく」ということが当たり前になってしまったのだと私には見えます。

そう考えると、デフレが始まって20年以上経ていますが、20年前に生まれた先ほどの世代、現在20代30代の人達が社会で言われている「欲がない」とか「上昇志向がない」というのも、当然のような気がします。

良い学校を出て良い就職先に入っても、この世代の多くが、第一に「安定」を望むような社会人にならざるを得ないと思うのです。

安定を第一に考えるような、従業員で構成された企業でイノベーションが起こるとは到底考えられません。

デフレマインドが生まれてからずっとその年代の人達には共有される価値観となればそれはその年代の「常識」にまで昇華することでしょう。

もちろん、バブル期を経験した年代もデフレについて「当たり前の状況」であり、また物価が下がること、給料が増えないことについて当たり前と思ってしまっています。

デフレが長く続くことによる影響は計り知れません。

「買い手市場のために常に買い手が横柄になりがち」

「頑張っても給料が増えない」

「所得が増えないなら頑張る意味がない」

「所得が少ないから結婚もしない(できない)」

「少子高齢化」

「貧困」

「自殺者数の増加」

出典:国勢調査

こういったことなどに繋がっていってしまうのです。

欲しいものが”ない”のは本当か?

デフレが脱却できない理由を以下のように言われる風潮があります。

日本は成熟社会だから、欲しいものが無い。

それがデフレから脱却できない理由である」

と今でもいるというのは非常に驚きです。

2011年くらいには、本当に多く言われていたような気がしますが、今でも言っている人は意外と多くいるのです。

「欲しいものが無いからデフレ論」には、欠陥があります。

それは

「人間が贅沢しないという前提」

で語られているということです。

別に欲しいものが無くても、いつもよりお金を多く持っていたら「なんか買おうかな~」となり、ネット検索するような人はいくらでもいます。

それにこんな経験など大多数の人がしているはずです。

宝くじで1億円当たったら?というアンケートは今でも旅行に行くとか、車を買うとか贅沢品の購入がランクインしています。

http://www.asahigroup-holdings.com/company/research/hapiken/maian/bn/201011/00360/

このサイトによると”預金する”が一番多いですが。

これはアンケートに答えた人の多くが政治の不安も抱え、更に、所得が継続的に増えることを想定していない結果だといえます。

私生活の中で「ちょっと今日は贅沢しちゃおうかな」ということが増え、生活水準が上がっていけば、それは”豊か”になるということです。

誰にでも欲望はあります。

欲しい物が無いと言っても、産業の多くを占めるのはサービス業ですので、そもそも物に限りません。

そのサービスの購入をしない、欲しいサービスが無いからデフレを脱却できないとはならないのではないかと感じるところです。

しかしこういったことを言うと以下のような反論があります。

「そう言うけど、グローバル的に見れば、日本は恵まれている方だ」

という類の反論です。

アフリカの人達は食べたくても食べられないんだから残すな」とか「途上国に比べれば日本人の賃金は高い方だ」

と言った反論です。

これは完全に詭弁と言えます。

何故なら、経済政策とは”国民”を豊かにすることが目的です。

途上国との比較はすべきではありませんし、比較するのであればOECD諸国と比較するべきです。

もっと言えば、20年以上経済成長していないのであれば、他国に学ぶのではなく”歴史”に学ぶべきであると私は考えます。

アフリカの人達は食べられないというのも実に不思議です。

アフリカの飢餓を無くそう的なキャンペーンは、20年以上前から存在しているのに何故未だに、アフリカ諸国は成長しないのでしょうか?

先進国がODAではなくインフラを整える技術を提供すれば確実に先進国的な豊かさはアフリカの一部には実現できたでしょう。

何故そうならないのかと言えば、アフリカ諸国の構造的問題もあると思いますが、おそらく

誰かが貧困であり続けるように仕向けている」可能性があるのです。

ODAや支援を受けたアフリカ大陸のどこかの国の政治家かもしれませんし、役人かもしれませんし、もしかすると先進国側かもしれません。

国家が本気になって、他国の支援も受けて更に、技術も提供されて20年以上貧困を継続することなど至難の業です。

このような反論は本当によく使われます。

マスメディアはもちろんですが、大学教授に代表される知識人や学者などは、話をすり替えることを非常に得意としています。

「事実」はこうして作られる〜既成事実化〜

 

因みに話をすり替える時によく使う言葉は、

「いずれにいたしましても」

「どっちみち」

「逆に」

「一方で」

「例えば」

などが、頻繁に使われているように見えます。

衆議院予算委員会などの問答は、基本的に想定問答集を基に官僚が作っているものですので、是非参考にしてみてください。

「霞ヶ関文学」なる言葉もありますから彼らエリートから学ぶことは、良いことも悪いことも非常に多いです。

私は官僚バッシングは基本的に財務省に限定しています。

他の省庁を叩いたところで仕方ないところもありますし、官僚の方々の話を直接聞けばバッシングなどする気も起きないでしょう。

というぐらい、官僚達の仕事ぶりは凄まじいものがあります。

とてもとても非難する気にはなれないところです。

そもそも、我が国はOECD諸国と比較しても非常に少ない公務員数ですから、もっと増やしてもいいのではないかと思います。

デフレですし公務員を増やすというのは、「公共投資」ですから、別に今はやったって良いのです。

公務員の給料をカットしたところでデフレ圧力になるだけです。

給料をカットされたら当然消費を減らすでしょう。

まとめ

「欲しいモノがないということなどない」

という結論になりました。

技術は投資の繰り返しによって発展していきます。

また新しい技術がいつか開発されるでしょう。

正にドラえもんの道具のようなものが発明され、民間にスピンオフされていくのです。

また実用化できるのにしないという事情もあるはずです。

本来ならフリーエネルギー装置は民間で商品化されていてもおかしくない程の事実と年月が経っています。

そのことは別の記事で書きたいと思います。

全てのデフレ圧力に中指を立てたくなる今日このごろです。

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