戦略物資として観た場合の「食糧」

先日、主要農作物種子法が廃止されたことは記憶に新しいと思います。

巷では、いつにも増して「種子法 デマ」といった種子法廃止を危険視する者に対して侮蔑混じりに批判が行なわれているようです。

一方では、議員立法で種子法を復活させる動きもあります。

種子法復活法案 安定供給の確保焦点 与野党主張は平行線 衆院農水委

主要農作物種子法復活法案について(概要)

危険視する者としない者の見解の隔たりは、結局のところ、種子、食糧に対する考え方が違うということです。

種子法廃止の危険性を主張する者は、種子という公共財産を民間に開放、データを民間に移譲させることは、食の安全や食糧安全保障を破壊してしまう可能性を説いており、また食糧そのものを戦略物資、兵器、少なくとも国民の公共財産として捉えています。

しかし、これら危険性を説く者に対して批判する者は、

食糧が国内で取れなければ、外国から売ってもらえば良い、だから外交政策はしっかりと国際社会に沿ったものでなければならない。」

と、言葉にはせずともこの考え方の前提がなければ、導かれない結論を出してきます。

グローバリストの企業経営者が言いそうなことでしょう。

外国が売ってもらえなくなったら?」ときたら移住すれば良い!と言うでしょうし、「国内にも食料がなくなり外国からも輸入できなくなったら?」と言われれば、そういったことに対する準備ができなかった個人の自己責任なのでは?といった具合に、国家や各個人の事情を意識、理解しないのです。

こういったことを言うと「日本の農業の国際競争力を上げようとしているじゃないか」と反論があるかと思いますが、日本で言う国際競争力とは低賃金労働でいかに生産するかという視点で考えられていますから、「日本国民」のことは考慮に入っていないのは明らかです。

どちらとも「食糧に対する認識」が違うのでいくら議論したところで平行線です。

しかし、アグリバイオビジネスを営む大企業やその国家が食糧を戦略物資として認識していることは明らかです。

ビジネス上の戦略物資と国家間上の戦略物資という意味合いは変わってくるのでその辺りをこの記事では考えてみたいと思います。

人間が生きていくために必要なもの

言うまでもありませんが、「衣食住」です。

着るもの、食べるもの、住むところですが、こういった人間にとって絶対に必要なモノを売る商売ほど賃金が低いということがあります。

国民が生きていくために絶対に必要なものとは、「国家の安全保障」ということになります。

安全保障を考えない国家は滅びます「◯◯がないだけで自由は奪われる」

上記の記事でも書きましたが、安全保障政策にはいくつかの種類があります。

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軍事安全保障は他国からの侵略を防ぐため。

食料安全保障は、国民の健康や飢え、飢饉を防ぐため。


医療安全保障は、国民の健康、命を守るため


物流安全保障は、モノの移動を確保しなければ経済が成り立たないことや、災害時に物資を被災地まで届けるための道路、交通インフラが確立させおくことで国民の命を守るため。


防災安全保障は例えば、津波や洪水などの自然災害対策のため。


防犯安全保障は、警察機構等、国民の平穏な生活を守るため


エネルギー安全保障は、地下資源、石油、天然ガス、石炭など国民の生活や企業の運営に欠かせないモノです。

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といった具合に、国民が安全に健康に文化的な生活を営むために欠かせないものがこれら安全保障の類型です。

食糧を戦略物資として観た場合にどのような政策が考えられるか

国内、国外向けと分ける必要がありますが、国内向けであれば以下のような政策を取ることができます。

国内向け政策

農業(特に主要農作物)について予算を大幅に付け、大量生産を図り、農家を準公務員扱いで国内の食料需要を満たす。

国外向けの政策として考えれば以下がオーソドックスと言えます。

国外向け政策

満たされた国内の食料需要を超えた分を、敵国やその周辺国、自国に対して有効的な国にダンピング輸出する。

特に敵国には集約的に安く大量に輸出すべきということになります。

なぜなら、敵国に対してダンピング輸出することで相手国の食料需要を自国に依存させることができるからです。

もちろん、WTOではアンチダンピング交渉が認められています。

経済産業省ーアンチダンピング交渉

しかし、「グローバリズム=善」と思考停止的に考えた人間はアンチダンピング交渉などするはずがなく、むしろどんどん自国市場に外国からの農産物を流入させることでしょう。

そんなイカれた国があるんでしょうか?

アメリカはこれまで輸出補助金を農家に出し続けてきました。

アメリカの攻撃的保護主義

米国農業は輸出補助金なくしては延命できない体質だ

我が国の農家はガチガチの市場競争で政府を味方につけているアメリカ農家と戦わなければいけないということになっています。

普通に考えて勝てるわけがありません。

このようにアメリカは自国の農業を(ちゃっかり)守り、相手国には公平を装いつつ市場を拡大させるという手法が行なわれているのです。

農作物という「武器」を使って。

生産額ベースの食料自給率では我が国は7割程度です。

余るぐらいがちょうどいいのでどんどん増やして欲しいところですが、農協改革、種子法廃止、水道民営化、その上農耕作業の為に必要なエネルギー資源も自国生産しているわけではありませんので、果たしてどうなっていくのか非常に恐ろしいです。

食料自給率の基本的考え方

今回の種子法廃止のように民間企業が種子を扱い、いざ販売してみて国内で利益が上がらないと判断したら、どうなるのでしょうか?

もちろん、国内以外の利益の出るであろう市場に流したり、農地の地目変更をして儲かるビジネスをするだけです。

日本人が飢えようと知ったことではありません。

そんなことが起こっても、魔法の言葉「自己責任」が企業を守ってくれます。

国会議員まで守る必要はありませんが、なぜか守られ続けているという特異な国が我が国、日本なのです。

国家戦略としては、他国を自国の生産する農産品で、それも安く溢れかえさせることができれば、その他国の国民はその外国から入ってくる安い農産品がなければ自活できないという状況に追い込むことができるのです。

とは言え、タイミングでその輸出先の景気がよく、割高だけど高品質の本国生産の農産物のほうを買えることができる国民が大多数であれば、ダンピング輸出はそれほど効果はないかもしれません。

しかし、自由貿易協定と経済協定、情報工作等によって相手国の景気を悪い方向に誘導することはできます。

例えば、財政出動をさせないように、あるいは緊縮財政を行うように、ODAを出させるようにとか、敵国の政治家や官僚をあらゆる手段をつかって籠絡することです。

具体的にはハニートラップが効果的です。

橋本龍太郎や谷垣禎一などが中国に仕掛けられまんまと型に嵌められたのは有名ですね。

真の保守だけが日本を救う

上海総領事館員自殺事件

昔、プチエンジェル事件というものがありました。

詳しくはググってみればよろしいかと思いますが、あの事件も国家絡みの事件のようです。

食料が兵器となることはおわかりいただけたでしょうか?

現在行なわれていることは、国民の財産としての農地、農業技術は、企業の「公正な競争」のために優先され、民間に開放されるといったことです。

企業の「利益」の為だけに。

農業が企業に売られる時に踊る言葉達

こういった法改正、改革というものは法律を変えなければできません。

企業が自社の利益となるように、法律を変えるということは、国政に影響力を与えるということです。

その手段として使われているのが「政府の諮問会議(規制改革推進会議)」「政治献金」「国会議員への脅迫等」です。

そして、いざそれを進めようという時に、企業、政治家、マスコミは以下のような言葉を使って農業市場の開放を国民に正当化します。

「強い農業」

「財政再建」


「国際競争力」


「攻めの農業」


「既得権益の打破」


「人道支援」


「復興支援」

などです。

小さな政府を実現し、民間の活力を活かして世界に打って出る」といった、詐欺師が言いそうなフレーズですがしかし、簡単に騙されてしまうのも日本国民です。

これらの言葉で世論のコンセンサスを得て国家戦略特区でお試ししてエリアを広げていくといった手法が取られることになります。

因みに国民の目から見て国家戦略特区で失敗したビジネスも、企業側から見て失敗していなければそれは、「失敗ではない」ということだけは理解しておくべきでしょう。

このような、企業やマスコミ、政治家、官僚など特定の集団や組織の利益を図る上で、あたかもそれが国民の為、国の為社会の為であるかのような美辞麗句を並べ立て、それらの組織の実現したい何らかの不正義を通し、そのために虚偽や欺瞞に訴えかけ続ける詐欺師のような思想が「新自由主義」というイデオロギーなのです。

小泉純一郎以来、我が国はワンフレーズポリティクスで行われるイメージ先行の政治が行われ続けています。

マスメディアの情報操作は以下を参考にしてください。

メディアの情報操作手法を公開します

 嘘を見抜く方法~正確な情報の掴み方~

「事実」はこうして作られる~既成事実化~

 洗脳はエンターテイメントの顔を持つ

兵器を使用することなく他国を侵略することができる

かつてアメリカはこれらの言葉を利用して、イラク、オーストラリア、アルゼンチン、メキシコ、ブラジルなどを以下の方法で侵略していきました。

まず、対象国の農地を集約し、輸出用作物の単一大量栽培を導入させる。

農業に企業が参入できるように徐々に法改正を促していき、取得した農地で大規模農業を展開し、”市場競争”に敗けた現地の農家を追い出し、米国企業が実質的な経営母体とします。

このように国民の財産としての種子は、企業の「公正な競争」のために優先され、民間に開放されるのです。

また自然災害に見舞われた国に対し、復興支援の名の下に遺伝子組み換え種子と農薬を無償提供したりしましたが、自然災害に便乗してそこの市場を奪い取るやり方はナオミ・クラインが明らかにしたショック・ドクトリン(惨事便乗型資本主義)のことです。

ショック・ドクトリンーナオミ・クライン著

因みに、人工地震や自然災害を人工的に発生させることを否定する人達の中に、人工地震や人工的に自然災害を起こすメリットがないと言う人がいますが、こういった事実があってもメリットがないと言えるのでしょうか?

戦中戦後の歴史に埋もれた「昭和の4連続超巨大地震」

「自然」という言葉に洗脳され続ける日本人

ジオエンジニアリング」で検索してみてください。

新しい国際ルールが作られた背景

結論から言えば、「冷戦の終結によってパックス・アメリカーナが実現したから」です。

95年WTOの誕生から、それまでアメリカ国内にしか存在しなかった「植物という生命に特許を与える法的な枠組み」が盛り込まれました。

95年という年は既に、アメリカが日本を敵視し、これから更に喰いにかかるという時代です。

日航123便墜落”事件”、プラザ合意、日米貿易摩擦からのジャパンバッシングや日米構造協議、スーパー301条などがあり、年次改革要望書が誕生したあたりです。

一言で言えば、こういった背景を踏まえて”種子”そのものが、「知的財産」という商品になったと言えます。

知的財産とは、著作権、意匠権、実用新案権、商標権などの法令によって定められた権利、保護される利益のことを指します。

つまり、国家、国民の基盤となる食糧にかかる種子が、マンガや特許などと同じように単なる商品として位置づけられたということです。

知的財産権ーWikipedia

これらの事実から察するに、冷戦終結を期に敵がいなくなったアメリカが日本に牙を向いた理由は、もう日本を守る必要がなくなったからであって、それまで投資した分の回収に回っただけの話です。

この辺りから、「グローバリズム」という言葉が流行りだしました。

食糧供給を支配する者は人々を制す。

エネルギーを支配する者は全大陸を制す。

貨幣を制する者は世界を制す。

―ヘンリー・キッシンジャー(1973年)―

 

 

平和を金で買うことの弊害

まとめ

この記事では食料を戦略物資として定義して話を進めましたが、実のところ食料に限らずあらゆる物が戦略物資となりえます。

以前書いた記事にまとめていますので興味があればご確認ください。

これを支配すれば統治できるよ〜大衆の取扱説明書〜

最近、あの悪名高きGMOのはしりであるモンサント社が同社の除草剤でがんになったと訴えた男性に320億円を支払うよう命じた評決が下りました。

Weedkiller glyphosate ‘doesn’t cause cancer’ – Bayer

He’s dying of cancer. Now, he’s the first patient to go to trial to argue Roundup made him sick

モンサント社有罪判決は始まりに過ぎない

訴えを起こした男性は非常に気の毒ですが、しかし世界の方向を大きく変えた可能性がありますから、本当にありがたいことです。

マスコミは絶対にこういった情報は報道しません。

せめて自分や子どもの口に入るものくらいには関心を持っていただきたいところです。

日本の食物が安全という洗脳もまだ解けていない日本人がほとんどでしょうから無理もないかもしれませんが…

日本人だけが知らない!日本の野菜は海外で「汚染物」扱いされている

モンサントの歴史的有罪判決!~これで浮き彫りとなったのは、発ガン性物質であるグリホサートを最大400倍に規制緩和した日本政府の異常さ!!

参考:貧困大国アメリカー堤未果 著

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