所有と経営の分離について過去に記事を書きました。
「株式を所有する=その企業の所有者である」ということが所有権絶対の原則によって守られることと、企業の株式を外国人が購入出来ること(資本移動の自由)の関係性を考えてみたいと思います。
日本国民の貧困化の一端を担っている可能性があります。
企業の所有権が株式にあること
目次
ご存知の通り、その企業の所有権は株主にあります。
株主は持株比率によって、行使できる権利が変わってきます。
議決権の数に応じて
一株以上
「書面による事前質問権・株主代表訴訟提起権(6ヶ月間継続保有要)・各種書類の閲覧・謄写請求権(定款、株式取扱規則、株主総会議事録、取締役会議事録、株主名簿、計算書類、監査報告書等)」
3%以上
「会計帳簿の閲覧謄写請求権・会社及び子会社の業務及び財産状況調査のための検査役選任請求権」
3%以上を6ヶ月間
「株主総会招集請求権・取締役・監査役の解任請求権・整理申立権」
10%以上
「解散請求権」
1/3超
「重要事項の特別決議の阻止(拒否権発動)」
1/2超
「経営権の獲得・取締役・監査役の株主総会での選任決議・取締役・監査役の報酬額の株主総会決議・計算書類の株主総会承認・会計監査人の選任に関する決議・取締役・監査役解任権」
2/3以上
「定款変更決議等の特別決議の成立・持株割合を変化させる事項(新株・転換社債等の有利発行)・会社の内容を変えてしまう重要事項(減資・合併・定款変更・営業譲渡・会社の解散・株式交換・株式移転・会社分割)」
根拠条文 会社法
303条2項、297条1項、433条1項、309条1項、309条2項
このように、株主はその企業の方向を決めることができます。
株主の負うリスクは「出資した金額のみ」となります。
しかし、その企業で働く従業員の負うリスクは「人生そのもの」となります。
だからこそ、企業で雇用される従業員は「労働基準法」という強い法律で守られているのです。
ところが解雇規制の緩和が進んでいけば従業員と株主を含む経営者側とのパワーバランスが崩れていきます。
そのために組合があるのでしょうが、我が国の労働組合は機能していません。
機能しているのであれば、政権が企業に対し、賃上げ要請などする必要はないからです。
労働組合は恐らく、企業側に買収でもされたのでしょう。
金を持っているのは企業の方ですから企業側はいくらでも買収などできます。
買収されたが最後、企業と組合の話し合いは茶番、出来レースになります。
株主が企業の方向、利益の分配、「従業員の生活」を決定する
日頃からお伝えしているように、株主のコストカットはまず従業員に対して行なわれます。
この時点で、従業員は「経費」であるという発想からその経費を削減していきます。
経費と言っても「人間」です。
従業員という立場の人間を路頭に迷わせることになるかもしれない人件費削減です。
世の中小企業経営者で従業員に対してそんなことを思って人件費削減を行っている経営者はまずいません。
心の中では泣いているのです。
経営者は株主から非常に強い圧力を受けているために、首切をせざるを得ないという状況になっていました。
このように、株主が自分の利益だけ、従業員を自己の利益を増やすための生け贄のような扱いしかしないような人間が株主になれば、企業はそういった発想の企業にならざるを得ません。
株主がそう言うんだからと経営者は思いますし、従業員はしっかりした洗脳を教育と称して企業や幼少の頃から受けているはずなので、従業員で団結して会社と闘おうという気概は生まれもしないし、やる気もありません。
従業員が立ち上がらないなら従業員の自己責任ということに話は終結してしまいそうですが、そうはなりません。
従業員は幼少の頃から「個人主義」を義務教育期間で叩き込まれています。
個人主義で一般的に良い人生を送ろうとするのであれば、「競争に勝つ」ということが目的となります。
こうなると、同じ職場にいる者、例えば同期でも、「仲間でありライバル」という発想になるでしょう。
「仲間でありライバル」という言葉は実に、綺麗で切磋琢磨をイメージしやすい言葉ですが、以下のように解釈することもできます。
「仲間とは利用し、ライバルは蹴落とす」
私の経験では、こういった人間模様が一般的のような気がしています。
こういった一般人(従業員)の傾向は株主、経営者からしてみると利用しやすいと言えます。
団結しないし、競争だけして結果を残そうとするし、そういう奴は労働時間とか気にしないし、駄目な奴は勝手にいなくなるだろうと思うことでしょう。
結局、株主が従業員の生活を決めているのです。
従業員の給料をカットしろ、人数を減らせと「金という数字を持っているだけの”同じ人間が”同じ人間をその紙切れを笠に着て支配している」ということです。
お金というものは、個人で言えば欲望を満たすものですが、もっと大きい概念に対してでは、「支配するためのもの」でもあります。
国家がある一族から金を借りて首が回らなくなるというのはご存知でしょう。
そんなものに支配されているのです。一国家が。
資本主義ですから、誰かが金を借りることで、経済が回ります。つまり誰かが借金をしなくてはいけないのが資本主義です。
借金の利息よりも大きい利率の投資を行いそれが全て成功すれば問題はありませんが、そんな都合の良いことはありません。
これは、悪魔のシステムと言えそうな気がします。
誰かが必ず犠牲になるシステムが資本主義なら、資本主義は金持ちが必ず勝者になれる出来レースシステムということになります。
株主が企業を支配し、その企業に関わる利害関係者をないがしろにし、株主として自己の利益を徹底的に追求することが株主資本主義ということとなります。
株主次第で、企業の本質的な価値が決まるということとなります。
株主が従業員の給料を上げようとすることは、基本的にありませんし、経営者もしません。
安かろう悪かろうの人材と商品サービスになっていきます。
株主がブラック企業の繁栄にも一役買っているのです。
外資が日本企業を食い物にした
96年から始まった金融ビッグバンによって外資の参入が認められていくことになりました。
その為にいわゆる護送船団方式が崩壊し、外資の参入と更に平成17年の会社法施行によって、企業の買収に関わるM&Aについての法令が変わっていきました。
株式交換や三角合併など言わば、外資が日本企業を買収することが容易になったということです。
当時の我が国は勿論デフレ環境下であり、今と同じく需要不足で供給過剰の状態でありました。
大手企業に資金需要は無く、中小企業に銀行はそれほど積極的には融資しない、起業に対しても消極的というデフレであれば当然の状況ですが、そんな時に外資規制の緩和をすることは、「売国行為」そのものです。
アメリカとしては、日本に対し「冷戦の間は日本を太らせる期間として手厚く保護すべき目的があっただけ」で冷戦が終結すれば、日本はただの「太らせた豚」でしかありません。
太った豚を、金融ビッグバンによって外資の参入を奨励し、外資系企業に日本の市場を食い物にさせた、とこういった構図となります。
賃金推移 出典:e-stat
96年から2001年にかけて金融ビッグバンが行われ、資本移動の自由化が常態的になってからと言うもの2001年から2014年にかけて営業利益は160%も増加しており株主配当金も276%も増加していますが、 人件費はたったの2%しか増加していないのです。
金融のグローバリゼーションと賃金が上昇しないことについて、軌を一にしていることから観ても一定の関連性はあります。
ハニートラップに引っかかった故橋本元総理は中国に対するODAを年々増額していくという状況にしてしまいました。
今や、中国に我が国は乗っ取られようとしているこの結果を見る限り、我が国の政治家は売国奴しかいないのであろうと感じる次第です。
総理の祖父がCIAエージェントでしたという話ですからある意味では致し方ないのかもしれませんが、そもそも、A級戦犯とされたにも拘らず、釈放された連中は、岸信介や児玉誉士夫、吉田茂、正力松太郎などその後売国行為に励んだ連中ですので、もうどうしようもないのであります。
外資系企業が日本企業を食い物にするその最たるモノがTPPだったのです。
TPPは24分野あり、その中には保険サービスや金融や医療などの分野があり、現実的には実質アメリカと日本の日米FTAでした。
日米FTAはこれから始まるでしょう。
それもTPPで批准した条件よりも更に、譲歩させられます。
グローバリゼーションは、良いことばかりではありません。
デフレ環境でグローバリゼーションを推し進めた結果が現在の状況なのですから、遅いかもしれませんがこれ以上、外国の食い物にされる我が国を観ているのは辛いところです。
まとめ
資本移動の自由化によって、我が国は外資系企業の食い物にされ、人件費をコストと断罪された挙句、そのような経営方針が効率的、無駄のない企業経営ということで賞賛され、一方の従業員は解雇規制の緩和やブラック企業問題、リストラ、長時間労働、残業代未払い等、これでもというぐらい負担を押し付けられました。
暴動が起きないことに私はビックリしているところです。
まあ現在の日本国民ほどのヘタレ、根性無しは世界でも稀です。
何せ、頭の上に爆弾を降らせた相手に私が悪うございましたとへーこらするぐらいですから、お話になりません。
我が国の保守というのはサファリパークのライオンでしかない、オルテガの言う甘やかされた坊っちゃんのようなものなのでしょう。