買い手市場が終焉します〜人手不足の解決策〜

企業の人手不足について過去にあれこれ書いてきましたが現実問題どうすればこの問題を解決できるのかについては書いてきませんでした。

以前書いたこの記事でも具体性に欠けますのでもう少し詳しく説明したいと思います。

人手不足の解決は移民政策か生産性向上しかない。

人手不足とは仕事が多いということ

デフレは仕事が無いという状態ですが、医療、介護、建設、運送などの人手不足が顕著な業界は仕事が多すぎて請けられないというインフレに近い状態なのです。

人手不足の原因は仕事量に対してそれを処理する人員が足りないということです。

なぜ人員の数に対して仕事量が多いのかということを考えなければいけません。

過去の記事で解決策は移民政策か生産性向上しかないというように説明しましたが、生産性向上の前提として「効率化」あるいは「過剰サービスの見直し」も必要となるでしょう。

20年以上のデフレ経済を経験した日本企業は顧客シェア獲得のために、当初は人員削減など経費削減をしていきましたが次第に無料サービスを多くしたり、取引先の要求を鵜呑みにしすぎ、人員の負担を重くしたりと様々あったのです。

経営者としては致し方ない部分でもあります。

しかし、その影響からか「ブラック企業」、「人気のない仕事」のイメージがついてしまった業種や企業も少なくありません。

こうして人が集まらない、人が集まらないからサービスを手厚くする、サービスを手厚くすることで従業員の仕事量やリスクが増える、でも賃金は上げられない、取引先が新たな要求をしてくる、そしてブラック企業化する。

当然企業の悪い噂は光の速さで社会を駆け巡ります。

ブラック企業に人は集まりません。

全てとは言いませんがこういった流れが一般的です。

過剰サービスの見直しの考え方

宅配業界の無料の時間指定サービスやごねた消費者への時間外の無料再配達、到着即日配達など、正に過剰サービスと言えます。

最近、ヤマト運輸の問題がクローズアップされていますが現場の人間は「やっぱりこうなったか」と驚く様子など一切ありません。

そして今、ヤマト運輸が12時14時の配達を取りやめることを検討するというサービスの見直しが検討されているとの報道がありました。

私は以下の記事での解決策を示した通りです。

物流戦国時代の終焉~ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の未来~

正直なところ、仮に12時14時の配達をやめたところで全体の荷量は変わりませんからドライバーとしてはそれ以降の配達と集荷に負担が集中してしまい、次は集荷の遅延や発送の遅延が発生するという新たな問題が浮上するでしょう。

一番良い解決策というのは、宅配業界が協議して一斉に運賃の値上げに踏み切ることですが、それは独占禁止法違反(カルテルの禁止)となってしまいます。

https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu.files/dokkinpamph.pdf

法律を守って人が死ぬような状態なのであれば本末転倒です。ただ”悪法もまた法なり”なのです。

そもそも談合の禁止だったり指名競争入札が一般競争入札に変わったのはアメリカの商工会議所の圧力です。

当時アメリカの商工会議所には我が国のそのルールがけしからんということが書いてありましたので…

しかし、サービスの見直しの見方を変えれば顧客を絞り込む良いチャンスでもあります。

当然何社かは離れていくかと思いますが、値上げしても、サービスがやむを得ない事情で悪くなっても、取引を継続してくれる顧客というのは、利益だけではない信頼関係があるということに他なりません。

サービスの見直しをする方にしても本来そういった顧客が欲しかったはずなのです。

離れた顧客は元々あなたの会社を都合よく使っていただけに過ぎず、用が済んだらさようならといった言わば使い捨てにされるのと同じだというように割り切ることも必要です。

サービス見直しの具体的方法

事業が立ち行かなくなるサービスの見直しはすべきではないですし、現実問題ひとつづつ見直して行くしかないでしょう。一気にやって急激な変化によって更に従業員の負担が増加します。

まずは「過剰サービス」とされるサービスの特定から始めます。現場視察や現場勤務の従業員と面談、あるいはアンケートのような物を書いてもらうようにすると良いでしょう。

ある程度特定できたら、特定できた過剰サービスを、従業員の負担の度合い、利益を必要以上に圧迫しているもの、大した事ないものというようにカテゴリ分けしていきます。

カテゴライズが済んだら、何が一番問題であるか優先順位を「経営理念を基準に」付けていきます。

経営理念を基準にすることで議論になった際に迅速な解決を図れるからです。

更にサービスの見直しのタイミングと見直した項目は必ず記録し、変化も記録します。

その際、変化を受け入れられない従業員が退職したり、反発する可能性は非常に高いので予めフォロー役を決めておくといいでしょう。

見直し方については、業種で具体的な方法は変わってくるので、個別のアドバイスはできませんが概ねこの通りにやっておけば問題はありません。

簡単にまとめると、

過剰サービスの特定→カテゴリ分け→優先順位を決め→記録

をPDCAと似た形で回すこととなります。

買い手市場の時代は終わりを迎えつつある

デフレ経済では物やサービスの価値は低くなり、相対的にお金を持っている者が強くなります。

この状態では買い手の交渉力が極めて高くなります。

仕事が欲しいならこちらの要求を呑んでもらう」と頬を札束で叩かれるといったイメージでしょうか。

実際に取引先の水増し請求の要求に応えざるを得なかったと言った経営者は沢山いました。

それをしなければ仕事がなくなると思えば致し方ない部分もあるでしょう。

しかし、そのような交渉力はもう彼らにはないのです。

何しろ自分たちの仕事をしてもらえなくて困るといった現実がすぐそこまでやってきているのです。

これまでのデフレ経済下の20年で大手にいじめられた中小企業は多いはずです。

やはり世の中は因果応報であるとしみじみ感じます。

これから中小企業の20年越しのカウンターが始まると思うとドキドキしますね。

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