「債権」
金融、法律を始め、全てのビジネスと絶対に切り離せないこの「債権」
「債権者」と聞くと何かあまり良くないイメージが定着しているような気がします。
金銭債権、指名債権、売掛債権、不良債権など様々な形の債権がありますが、そもそも債権とは何でしょうか?
この記事では、「債権」の考え方、問題、事実を考えてみたいと思います。
債権とは?
債権とは、民法の債権編399条以下に規定されている
「法的な権利」です。
法的な権利とは何かと言うと
「法律を根拠として自己の権利を主張できるということ」
となります。
例えば、あなたが、半年の返済期限の借用証書を書いてもらった上で友人に100万円を貸したとします。
この時点であなたは、友人に対して100万円の”債権”を持ったことになります。
逆に友人はあなたに100万円の”債務”を負ったことになります。
幾ばくかの月日が流れ予め決めておいた返済期限が到来しましたが、友人はそのお金を返してくれません。
この時に、あなたはどういう行動をするでしょうか?
通常、友人に「お金を返してくれ」と言うはずです。
「友人に貸した金はあげたようなもの」と考える人も多いかと思いますが、あくまで一般論で話を進めます。
話を戻します。
あなたがお金を返してくれと友人に請求できる権利(弁済を受ける権利)、この権利が「債権」なのです。
この支払いを求める権利は何を根拠に行使できる権利なのか?
それが民法第412条以下の規定を根拠に「請求していいよ」
となっていると、こういうわけです。
一方、お金を借りた友人の方は、
「100万円をあなたに返済する義務=債務」
を負っています。
これが債務者です。
債”権”者は権利を行使できる者であって、債”務”者は義務を負う者という関係性になります。
因みにですが、バランスシート的に例に挙げた行為を考えるとこうなります。
あなた(債権者)
貸す前
資産 負債
現金預金 100万円
金銭債権 0
純資産 100万円
貸した後
資産 負債
現金預金 0
金銭債権 100万円 純資産 100万円
友人(債務者)
借りる前
資産 負債
現金預金 0 0
金銭債権 0 0
純資産 0万円
借りた後
資産 負債
現金預金 100万円 流動負債100万円
金銭債権 0
純資産 0万円
合計 100万円
となります。
債務者はあなたからお金を借りる前に何も無かった、あなたが友人にお金を貸した時に友人は銀行預金にしたという前提で考えています。
こうなると、債務者の方のバランスシートは100万円分計上されたことで、社会に出回るお金の量は”200万円ということ”になるのです。
実際に社会に出回る現金の量は100万円分しかありませんが、債務者はあなたから借りたお金を何かに使い、どこからから100万円を調達し、いずれは返すことになります。
例えば、友人があなたから借りた100万円で事業を始めたとして、その100万円は事業に当てられるので、事業をするための投資を行うことになります。
その投資の中で資材を買ったり原材料を買ったりし100万円はそれらを販売した業者の所得になり、それを友人は10万円の付加価値をつけて、110万円で消費者に販売します。
結果、100万円の元手で110万円のお金を手に入れることが出来ます。
これが所得創出の過程でありますが、元々、社会に出回っていたお金は100万円です。
その差額の10万円はどこから生まれるのでしょうか?
その答えが借金であり”負債”なのです。
「経済は借金で回っている」とはこういうことです。
以前の記事「銀行がしていることの意味〜銀行の真実〜」でも書きましたが、銀行が融資の依頼を受けた時に行うことは、融資を希望する人の返済能力を確認して、その人の通帳に「融資する金額を記帳」するだけです。
実際に現金で渡すことはまずありません。
これが信用創造であって、以下の記事でも書いたお金が本質的にバーチャルなものというのはこういうことです。
お金とは借用証書である
お金とは何か?という記事でも書きましたが、お金とは「債権債務の記録」です。
日本銀行のバランスシートの負債の部には日本銀行が日本円を発行した金額分計上されています。
http://www.boj.or.jp/about/account/data/zai1606a.pdf
日本円とは日本銀行に対する借用証書だということです。
ですが、日本銀行には返済義務も利払いの義務もありません。
仮にあったとしても何で支払えというのか?
外貨なら両替屋行けって話にもなります。
つまり、お金(日本円)とは日本銀行に対する「債権」であり、借用証書であるということです。
その借用証書の移動、民法第467条の債権譲渡が日々行われているのがビジネスなのです。
民法第467条では、債権を第三者に譲渡した場合には、譲渡人がその債務者に確定日付のある証書で通知または債務者の承諾を得なければいけないのですが、通貨にはそういった規定はありません。
要は通貨は流通することを前提とした債権(借用証書)だということです。
流通することを前提とした債権はいくつかあります。
「切手」や「商品券」などがそれに当たります。
切手は日本郵便に対する債権です。
切手で郵便サービスの支払いに当てています。
商品券は、発行した百貨店の債務であり、持ち主が債権者となるのです。
個人で発行できるお金は、「小切手」です。
小切手は当座預金残高を担保に発行できます。
他にもあります。
例えば、「この証書を持っている者に金100万円を支払う」という形で、債務の弁済に使うことができます。
現代では受け取ってくれる人はそうそういないですが、受け取ってくれた人は、自分の何かの弁済の時にその証書で弁済できるということになるのです。
実は私が中学生の時にこういったことが現実にあったのです。
とんでもない話ではありますが、当時、友人同士のお金の貸し借りがありました。
金額は1000円くらいまででしたが、ある時、期限までに金を返せない友人(吉田)がとった行動は、「この紙を持っている人に500円を支払います 日付、名前」という紙を渡して、
「返せなくて本当に悪いんだけど、竹本(別の友人)にこれを渡して500円貰ってくれないか」と。
500円を貸してた奴(鈴木)は、「竹本を呼んで竹本が良ければそれで良い」と言い竹本を呼び出し竹本の承諾を得て、実際にその「紙切れ」で吉田は金を借りてる相手である鈴木に支払ったのです。
竹本は大変甘い男でしたから吉田の弁済をずっと待っていました。
晴れて鈴木は自分の債権(500円)の支払いを結果的に竹本から回収出来たのです。
吉田の書いた証書は、竹本のところで止まっています。
権利関係の過程としては、
吉田が証書を発行(債務者)→鈴木(吉田の債権者)が吉田の弁済としてその証書を取得→鈴木が竹本に、現金500円と引き換えにその吉田発行の証書を渡す(この時点で吉田の債権者は竹本となる)→吉田発行証書は竹本の手元で止まる。
当時の私はこいつら何してんだろうぐらいにしか観てなかったのですが、よくよく考えたら恐ろしいことをしていたのだと思ったものです。
この方法が仲間内で広がっていたら、とんでもない事態になっていたと思います。
何せ、当時15人程のグループでしたから、皆が吉田と同じような行動を取っていたら関係はぐちゃぐちゃになっていたでしょう。
また竹本が、他の友人にその吉田発行証書を回して、仲間内で何かの弁済に当てていたら、全員に広がっていたと思います。竹本に感謝です。
この吉田発行証書は完全に通貨の形態を帯びた、「債権」です。
後から聞いた話だと、吉田はただ鈴木の激しい追求を逃れたかっただけで、竹本なら待ってくれると思って、その場しのぎで思いついたらしいのですが、今になって考えると発想が悪ど過ぎます。
吉田は後になってお年玉かなにかで支払ったので事なきを得ました。
通貨の説明は非常に難しいのですが、実はこういった単純な仕組みなのです。
お金を増やすにはどうすれば良いのか?
お金を増やすには?誰もが知りたいことではありますが、一言で言えば
「誰かに債務を背負わせること」
でお金が増えていきます。
とんでもないことを言っているとは思いますが、聞いてください。
この場合の債務は「お金を借りさせること」だけではありません。
債務とはそもそも「履行義務」のことです。
私達が何か買い物をする時には、お金と交換してその目的物を取得します。
この時の権利関係を説明すると以下のようになります。
あなたが家電屋さんでテレビを買うとします。
あなたが30万円のテレビを買う→
店員がテレビを持ってくる→
あなたは30万円の支払い義務(債務)を負うのと同時に、家電屋に対してテレビを引渡しを求める”債権”を持つ→
家電屋は逆に、あなたに対して、テレビの代金30万円を受け取る権利を持ち、同時にテレビをあなたに引き渡す”債務”を負う
互いの債権債務が履行され、権利関係が消滅する。
買い物とはこういうことなのです。
いちいちこんなことを考えて買い物をする人はまずいないと思いますが、権利関係で言えばこういうことなのです。
つまり、誰かに債務を負わせるというのは「お金を支払う債務を負わせる」ということです。
要は、「ビジネス」です。
良いものを売って、その対価としてお金を受け取る。
これがお金を増やす為に取る一般的な行動です。
他には、投資という形もありますし、投機という形もあります。
そんなことはわかってるよとなると思いますが、お金を増やす為に、マーケティングを学んだりセールス能力を磨いたりすることはよくあることです。
ビジネスとは利益を生み出す活動です。
お金を増やすということは、人に債務を背負わせる技術でもあるのです。
あえて辛辣な表現をとっていますが、事実です。
でも、債務を弁済する人を喜ばせること、つまり喜んで弁済してもらうこと(喜んで買ってもらうこと)がビジネスの基本だと思っています。
金のために粗悪品を売りつけることをビジネスとは言いません。
企業が社会の公器であることも忘れてはいけません。
まとめ
債権とは権利、債務とは義務。
当たり前のことではありますが、よくよく考えてみると普段見えない側面があることに気付きます。
「常識を疑う」ことは大事なことですね