アメリカの覇権が終わる日〜覇権なき世界の始まり〜

先日、「帝国主義とグローバリズムは根がひとつ」という記事の中で「なぜ自民党の公約の尖閣諸島に公務員(自衛隊)を常駐するという公約が実現しないのか?」

というお話をしました。

日米安保条約のある状況で尖閣諸島にただ自衛隊を常駐させれば中国の侵略を阻止できるのになぜしないのか?

ここが我が国がまだアメリカの植民地であるということの根拠となり得るのです。

アメリカの未来予測

アメリカは4年に1回、新たな大統領の為に、その後の世界の長期ビジョンを予想し、それを踏まえた政策を策定します。

それをグローバルトレンドと言い、最新のものでは2012年グローバルトレンド2030と題し、第二次オバマ政権のために制作されました。

このグローバルトレンドはアメリカの国家情報会議(NIC)というCIAやFBIなどの諜報機関などを統括する組織です。

このグローバルトレンド2030の中で非常に重要な一節が盛り込まれています。

以下防衛省の和訳

未来の姿

現在において回想する過去の転換点とは、1815年、1919年、1945年、1989年であり、当時は、その先に続く道筋が明確でなく、世界はその未来を描くことができなかった。しかし、現在我々は、過去20年間の著しい変化にもかかわらず、今後、その変化のスピードが加速されていくという情報を十分すぎるほど得ることができている。それゆえ、我々は4つのシナリオを描き、2030年に世界が向かう道筋をそれぞれ示した。「立ち往生」、「連携」、「格差社会」、そして「非国家の世界」である。過去に発表した報告書において、我々は、事態の仮想シナリオを示し、将来について皆がより創造的に考察することに力を尽くしてきた。我々が、意図的にまとまりのない異なった考えうるシナリオを描いたのは、既知の流れを直接的ではなく、大きな影響を与えるものを映し出すためである。我々は、変化や転換点、不測の事態についてより理解することが、意思決定権者である政治家がトラップを回避し、前向きに発展する機会を増やすことを望んでいるからである。

和訳終わり

この4つの年代に何があったのかと言えば、

1815

ナポレオン戦争でイギリスが覇権を治めた年

1919

第一次世界大戦が終わりイギリスの覇権が終わりアメリカやドイツが台頭した年

1945

第二次世界大戦が終わりアメリカに覇権が交代し、冷戦が始まった年

1989

ベルリンの壁崩壊など冷戦が終結しアメリカ一国覇権が始まった年

つまりこれらの年は覇権が交代した時だということです。

アメリカは今、「今後アメリカの覇権は無くなり覇権国家が存在しない時代になる」G 0(覇権国家が0)の世界になるとこう言っているわけです。

これを踏まえて尖閣諸島問題を見ると、何故尖閣諸島に公務員を常駐出来ないのかが理解できます。

尖閣諸島に公務員を常駐させればアメリカの覇権国家としての地位が無いことが顕在化する。

公務員を尖閣諸島に常駐させれば世界は混乱する

仮に、公務員を尖閣諸島に常駐させた場合どうなるでしょうか?

恐らく、以下のような流れが予想できます。

  1. 尖閣諸島に武装した公務員が常駐
  2. 中国が尖閣諸島を攻めて来る
  3. 自衛隊が対抗する
  4. 日米安保条約発動の機運や日本国内の世論が高まる
  5. アメリカ議会で集団的自衛権の行使の議論がされるが批准さ
  6. れない
  7. 日米安保条約って何だったんだ?という話になる
  8. それが世界中に知れ渡り日米安保なんて飾りだったんだという世論が高まる
  9. いよいよアメリカの覇権が対内的にも対外的にも終結したことが顕在化する
  10. 世界中の先進国が覇権を求め混乱が予想される

まあこれが一番自然な流れだと言えます。

要は世界中が時代が変わったと認識するということです。

アメリカの国内世論ではイラク戦争等で多くの若者が死に、他国の戦争に関わるなという世論が支配的です。

そんな中、同盟国とは言え他国の無人島を守るために、若いアメリカ国民の命を危険に晒すのかと言われたらそれはできないといった空気が既にアメリカには形成されています。

その上、アメリカの世界戦略の中に、プリンストン大学のクリストファーレインが提唱したオフショア・バランシングという戦略があります。

この他国の紛争には極力関わらずに中国や日本の覇権国としての成長を阻止すべきという戦略と、アメリカの基本戦略である航行の自由原則(FON)がありますが、この尖閣諸島問題でどちらがアメリカの国益になるかは一目瞭然であると言えます。

オフショア・バランシング戦略の中では中国の東アジアにおける地域覇権の台頭は許容するというものなので、アメリカとしては、極東の島国の無人島など眼中に無く、もっと言えばどうでもいいという結論に達せざるを得ないのです。

更に2013年の一テレビ演説で「アメリカは世界の警察官ではない」と言ったことも合点がいきます。

中国の東アジアでの横暴を容認しているも同然なのです。

以上が、尖閣諸島に公務員を常駐させることができない理由です。

単に日本政府がアメリカの圧力に屈しているだけです。

しかし、気になるのはグローバルトレンドという長期のビジョンをアメリカ政府が踏まえて戦略を立ててくるということです。

本来、戦略や計画などの国家ビジョンの骨子となり得るものを公的に発表することなどあり得ません。

なぜなら、相手に自分の手の内を明かすようなものだからです。

したがってこれは表向きの戦略である可能性が非常に高く、国家よりも強い力がを持つ存在も視野に入れなければ見えてこないモノもあると確信しています。

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