これまで私は、貨幣というものについて、また日本国債というものについて記事を書きました。
財政破綻を煽っていた財務省が「日本は財政破綻しない」という矛盾
理論的に、また究極的には自国通貨建て国債がデフォルトすることはあり得ません。
これは、財務省も認めています。
以下は財務省のホームページに掲載されているものです。
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1.貴社による日本国債の格付けについては、当方としては日本経済の強固なファンダメンタルズを考えると既に低過ぎ、更なる格下げは根拠を欠くと考えている。貴社の格付け判定は、従来より定性的な説明が大宗である一方、客観的な基準を欠き、これは、格付けの信頼性にも関わる大きな問題と考えている。
従って、以下の諸点に関し、貴社の考え方を具体的・定量的に明らかにされたい。
(1)
日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。
(2)
格付けは財政状態のみならず、広い経済全体の文脈、特に経済のファンダメンタルズを考慮し、総合的に判断されるべきである。
例えば、以下の要素をどのように評価しているのか。
・マクロ的に見れば、日本は世界最大の貯蓄超過国
・その結果、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化されている
・日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高
(3)
各国間の格付けの整合性に疑問。次のような例はどのように説明されるのか。
・一人当たりのGDPが日本の1/3でかつ大きな経常赤字国でも、日本より格付けが高い国がある。
・1976年のポンド危機とIMF借入れの僅か2年後(1978年)に発行された英国の外債や双子の赤字の持続性が疑問視された1980年代半ばの米国債はAAA格を維持した。
・日本国債がシングルAに格下げされれば、日本より経済のファンダメンタルズではるかに格差のある新興市場国と同格付けとなる。
2.以上の疑問の提示は、日本政府が改革について真剣ではないということでは全くない。政府は実際、財政構造改革をはじめとする各般の構造改革を真摯に遂行している。同時に、格付けについて、市場はより客観性・透明性の高い方法論や基準を必要としている
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としています。
このように実際は彼らがいわゆる国の借金問題は嘘であることを一番知っているのです。
しかし、このいわゆる「財政破綻」が起こるという結論に落ち着くように考えた場合どのようなレトリックになるでしょうか?
また、そのレトリックは現実的にあり得ることなのか考えてみたいと思います。
財政破綻の定義
目次
財政破綻の定義は以下に絞られます。
「デフォルト」
となります。
デフォルトとは、
「国債の償還ができなくなった場合」
「国債の利払いができなくなった場合」
を指します。
この場合を主にデフォルトと言います。
ギリシャのような国は典型的です。
この定義であれば、財政破綻はあり得ないということになります。
そして、日本銀行は我が国の中央銀行であり、株式会社であり、日本政府が55%の株式を所有する資本金1億円の、株式市場に上場する民間企業です。
45%の株主は非公表ですが、恐らく皇室や宮家が一部持っておられるのでしょう。
また、日本銀行は日本銀行法という独自の法律によって規制されています。
いわゆる国の借金というものは、財務省が発行する国債のことで、日本銀行、メガバンク、年金基金、保険会社で8割以上保有しています。
100%自国通貨建ての国債であれば、償還時期に日本銀行が通貨を発行して返済という形をとり、日本政府が債務者、日本銀行が債権者という構図になります。
これまで説明した定義であれば、100%財政破綻はあり得ませんが、仮にこの定義に依らないで、財政破綻と言える状態になることはあるのでしょうか?
その可能性を考えてみます。
BIS基準、規制の存在
スイスのバーゼルにあり、「BIS」と呼ばれる中央銀行の中央銀行といった存在です。
バベルの塔そっくりですね。
BISの目的は、以下のことです。
•議論を促進し、中央銀行間の協力を促進する
•財務の安定を促進する他の当局との対話を支援する
•金融と金融の安定性に関する問題に関する研究と政策分析
•金融取引における中央銀行の主要なカウンターパーティーとしての役割
•国際金融業務に関連する代理人または受託者としての役割
財務および金融の安定性に関する私たちの活動の一環として、政策分析、学術研究および公的討論を支える関連分析および国際的な銀行業および財務統計を定期的に公表します。
ということになっています。
そして、BISにはBIS基準と呼ばれる規制の取り決めがあります。
バーゼル合意、バーゼルI、II、IIIとは何ですか? いわゆるBIS規制とは何ですか?ー日本銀行
から引用
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バーゼルⅠ
バーゼルIは、国際的な銀行システムの健全性の強化と、国際業務に携わる銀行間の競争上の不平等の軽減を目的として策定されました。これにより、銀行の自己資本比率の測定方法や、達成すべき最低水準(8%以上)が定められました。
わが国では、1992年度(平成4年度)末から、バーゼルIが本格的に適用されました。
バーゼルⅡ
バーゼルIIは、(1)最低所要自己資本比率規制(リスク計測の精緻化)、(2)銀行自身による経営上必要な自己資本額の検討と当局によるその妥当性の検証、(3)情報開示の充実を通じた市場規律の実効性向上、を3つの柱として策定されました。
バーゼルIIでは、達成すべき最低水準(8%以上)はバーゼルIと変わらないものの、銀行が抱えるリスク計測(自己資本比率を算出する際の分母)の精緻化が行われました。わが国では、2006年度(平成18年度)末から(先進的なリスクの計測手法を採用する一部の銀行は翌2007年度末から)バーゼルIIに移行しました。
バーゼルⅢ
バーゼルIIIは、世界的な金融危機の再発を防ぎ、国際金融システムのリスク耐性を高めることを目的として策定されました。
具体的には、銀行が想定外の損失に直面した場合でも経営危機に陥ることのないよう、自己資本比率規制が厳格化されました。また、急な資金の引き出しに備えるための流動性規制や、過大なリスクテイクを抑制するためのレバレッジ比率規制等が導入されることになりました。規制を設計する際、金融システム全体の安定性を維持するというマクロ・プルーデンスの観点が重視されている点も一つの特徴です。
バーゼルIIIは、わが国を含む世界各国において2013年(平成25年)から段階的に実施されており、最終的には、2027年初から完全に実施される予定になっています。
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となっています。
要はこの取り決めを各国の中央銀行並びに民間銀行は守りましょうねという話です。
バーゼルⅢに国債に係る重要な一文が以下のリンクの13ページから見られます。
BIS原文
Governors and Heads of Supervision finalise Basel III reforms
各資料
プレス・リリース「中央銀行総裁・銀行監督当局長官はバーゼルIIIの最終化に合意」の公表について
この一文には、
「自国通貨建ての国債は格付けにかかわらず信用リスクを0にすることができる(各国裁量)」
と書いてあります。
ここからも先ほどの定義による自国通貨建ての国債の財政破綻はあり得ないということになります。
BISの取り決めは各国の中央銀行のメンバーが集まって決めた取り決めということになります。因みに日本銀行は理事会のメンバーです。
これでも財政破綻が起こるとするならどういった場合でしょうか?
財政破綻=BIS基準違反による通貨発行の制限
財政破綻が仮に起こるとするなら、バーゼルⅠとバーゼルⅡの「自己資本比率8%」縛りに関わる事柄です。
要は、
「自己資本比率8%を達成できない銀行は、国際業務から事実上の撤退させされる」
ということです。
日本では1993年3月にBIS規制が実施され、続けて金融庁が1999年に金融検査マニュアルを導入し、「自己資本比率4%以上」という独自の規制をかけました。
実に愚かですが、この金融検査マニュアルは18年度末に廃止が決定されています。
このことで、貸出が大幅に減少し続けデフレが加速してしまった側面もありました。
このことと、民間銀行の株主が外資で、その影響力が強くなった金融機関が「自己資本比率8%」とバーゼルⅡを建前に(実際には明確にしないと思いますが)「日本国債を買わない」と言い出した場合に、面倒なことが発生するのです。
1年ちょっと前に、三菱UFJが国債特別資格を返上するという記事がありました。と軌を一にして独自の仮想通貨を発行するというニュースもありました。
私は可能性としては非常に低いと思いますが、金融機関が日本国債を購入しなくなることで、中央銀行が直接買い入れするようになります。
そうなると、日本銀行のBIS基準違反の可能性が出てきてしまうのです。
また、財務省の国債企画課で来年度予算が立たないという事態も発生することになるでしょう。
つまりBISが日本国債を「リスク資産」として急に認識を変更し、それをBIS基準違反として日本銀行に対して勧告をしてくること、その上BIS管理となり「通貨発行の制限」がかかるかもしれないということです。
そうなったことで、「事実上の財政破綻」ということになります。
通貨発行ができず、予算も組めないとなればそれは紛れもなく「財政破綻」と言えます。
冒頭で説明した定義ではありません。
こうなれば、確実に「国家緊急事態宣言」が発せられることでしょう。
「強い者がダメと言ったらダメ」という世界です。
日本は敗戦国であり植民地である
これまで説明した考え方というのは、完全に我が国に対する、通貨攻撃ですし正に通貨戦争ということになります。
しかしこれは完全に陰謀論です。
なぜなら、冒頭で説明した通り、BISで取り決められた自国通貨建ての国債は信用リスクをゼロにすることができるとバーゼルⅢで決定されています。
国債を政府が発行してそれを直接日本銀行が買い入れることをBIS基準違反とは、BIS自身もしていません。
日本銀行のオペレーションには以下の種類があります。
共通担保資金供給オペ
日本銀行が、「適格担保取扱基本要領」に基づき適格と認める金融資産(国債、地方債、政府保証債、財投機関等債、社債、CP等、手形、証書貸付債権など)を担保として資金を供給する。
国債買入
日本銀行が、利付国債を買い入れることによって資金を供給する。
国庫短期証券買入オペ
日本銀行が、国庫短期証券を買い入れることによって資金を供給する。
CP・社債買入
日本銀行が、CPや社債等を買い入れることによって資金を供給する。
ETF・J-REIT買入
日本銀行が、ETFやJ-REITを買い入れることによって資金を供給する。
国債買現先(かいげんさき)オペ
日本銀行が、利付国債や国庫短期証券を、予め定めた期日に売り戻す条件を付して買い入れることによって資金を供給する。
CP等買現先オペ
日本銀行が、「適格担保取扱基本要領」に基づき適格と認めるCP等を、予め定めた期日に売り戻す条件を付して買い入れることによって資金を供給する。
資金吸収オペレーション
表 資金吸収オペレーション
売りオペレーション
手形売出オペ
満期が3か月以内に到来する手形であって、日本銀行が振出人、受取人、支払人を兼ねるものを、日本銀行が売却することによって資金を吸収する。
国債売現先(うりげんさき)オペ
日本銀行が、利付国債や国庫短期証券を予め定めた期日に買い戻す条件を付して売却することによって資金を吸収する。
国庫短期証券売却オペ
日本銀行が保有する国庫短期証券を売却することによって資金を吸収する。
これらを有無も言わさず「ダメです」とはBISも言えないはずです。
ただ、我が国は敗戦国であり植民地だということが不安を駆り立てます。
これまでもありましたが、日本のオリンピック選手がバサロで優勝するとバサロが禁止になってみたり、スキージャンプで日本人選手が優勝するとスキー板の幅が変わったりと、日本あるいは日本人にとって嬉しいこと、良いことなどプラスのことが起こると、大抵日本にとって不利なルールが突然設定されるということが起こるのです。
まとめ
少し議論がとっ散らかったところは否めませんが、結局のところ考えるべきこととしては、
「日本銀行は対内的には独立しているが対外的には独立していない」
「現時点で国債の償還、利払いができないことはない」
「日本はルール変更でいつも煮え湯を飲まされる」
「今後もデフレは継続する」
ということです。
安倍晋三総理が三選し、緊縮財政路線は継続することでしょうし、数字をいじって景気回復をしているように装うことになるでしょう。
景気が良いんだからまた増税という流れになるように考えられます。
財政問題は現実には存在しません。
我が国最強で最大権力である財務省が解体あるいは方向転換されなければ今後も好景気は起こらないでしょう。なぜなら日本国債のリスクというのは「各国裁量」でよいとBISは取り決めています。