紙幣や国債を返済する必要がないという記事が出ていました。
http://toyokeizai.net/articles/-/163330
「返済される」からこそ守られる大切なことと、サブタイトルがありますが、こういったことを言う者がいるから、いつまでも我が国はデフレを脱却できないのです。
この記事では「手形」とコメ取引で例えていますが根本的に間違っていることがあります。
典型的なプロパガンダだと私は感じました。
非常にプロパガンダ資料としてはおもしろい記事なので見てみたいと思います。
手形と紙幣は違う
手形はこのリンク先の記事でもあるように裏書譲渡が前提とされます。
手形を振り出すとは個人が「お金を発行する手段」です。
当座預金口座残高を「担保」とします。
日本円の担保は、我が国の経済力、即ち「生産資産」です。
生産資産とは、GDPを創り出す力、生産力ということです。
手形の担保は「日本円」、日本円の担保は実態のある「生産資産」ということです。
斉藤 誠 :一橋大学大学院経済学研究科教授はこの説明を意図的に省いていると言えます。
これが以前に書いたプロパガンダ手法のひとつである「権威の活用」と「論点をズラす」です。
紙幣は確かに日本銀行の債務として計上されていますが、日本銀行は通貨を発行する機関ですのでそもそも担保が手形とは違うのです。
「いつでも返済されることが大前提」という謎理論
以下引用
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まずは1万円札を民間銀行に預け入れると通帳に記帳される。つまり保有者からすれば1万円相当の民間預金の形で返済されたことになる。1万円札を預かった民間銀行は、それを日銀に持ち込んで日銀に開いた当座預金に入金する。ただし日銀の当座預金も、紙幣と同じく日銀の負債だ。これでは1万円札が当座預金に代わっただけで、返済されたことにならない。
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第一に一般の銀行預金は銀行の「負債」としてバランスシートに計上されています。
銀行預金とは預けた者(正確には貸した者)、銀行に対する強制的な債権です。
第二に、銀行が国債を買っているのは民間に資金需要が無いから国債で運用せざるを得ないというだけの話です。
企業が設備投資などの投資をしない理由は「デフレだから」に他なりません。
端的に言えば経営者が「不景気だから金を借りて投資しても儲からない」と判断しているということです。
それは、企業の内部留保の推移と企業の設備投資額の推移で明らかなことです。
企業の内部留保推移 出典:法人企業統計
民間企業設備の推移 出典:内閣府
そもそも日本銀行が国債を金融機関から買い取る時は、各銀行が日本銀行に持つ「日銀当座預金」という口座に、デジタルデータで買い取った国債の分の金額を入力しているだけです。
この場合、通貨の発行は日銀当座預金残高を”キーボードで入力して増やす”という方法で行われています。
日銀が日本政府の国債を買い取ればそれは、実質的に”返された”ということになるのです。
なぜなら日本政府と日本銀行の関係は、日本政府を親とし、日本銀行が子とする、貸し借りが相殺される関係なのです。
この記事では自国通貨建ての国債で発行されていること、通貨発行権の存在を意図的に無視していると考えられます。日本円は日本でしか発行されておらずまた、日本国内でしか使用できないのですから。
もしかしたら新しく財務省が雇った御用学者かもしれません。
「返済しなくてよい」の意味
以下引用 太字はツッコミです。
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現在、盛んに議論されている金融政策提言の中でも、アデア・ターナー氏(英金融サービス機構・元長官)やジョセフ・スティグリッツ教授(米コロンビア大学)が主張する大胆な提言では、日銀が保有する国債について「いつまでも返済する必要がない」のであるから「ないもの」(日銀が国債を買い取っているから実質的に”ないもの”となります)とすれば、日本の公的債務問題はずいぶんと解消されるというものである。いったん日銀が保有する国債が無効とされれば、日銀は紙幣や当座預金を返済する原資(現代が金本位制かなにかと勘違いされているのでは?)を永遠に失ってしまう。
一方、クリストファー・シムズ教授(米プリンストン大学)が主張している慎重な提言では、国債の「返済されない度合い」を政策的に微調整できるとして、「当面、返済されない」国債や紙幣が実質価値を下げて物価が上昇することを期待している。
しかし、これら2つの考えは、国債と紙幣が「返済される」という大前提によって1つ1つの通貨取引が守られているこの仕組みを、根底から殺(あや)めてしまう点ではまったく同じである。(ちょっと何を言ってるかわかりません)
私たちの社会にとってきわめて大切な通貨制度の根幹を揺るがしてまで達成しようとすることが、公的債務を踏み倒し(実質的に”返済”しています)、通貨や国債の価値を毀損して(通貨や国債の価値の定義がわかりません)物価を上昇させることにあるならば(それが通貨制度下の経済政策です)、そのような経済政策は「どうかしている」としかいいようがないと思う。(経済とは経世済民。国民を守るためならどんなこともしなくてはならない存在が政府です)
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クリストファーシムズ教授やジョセフ・スティグリッツ教授が言っていることを曲解しているのでしょう。
彼らが言っているのは、「国債の借り換え」のことです。
国債の償還期限が来たら繰り延べ、借り換えするのです。
金融機関もわざわざ国債を日銀当座預金残高を増やすようなことはしません。
いずれにせよ現状は民間に資金需要がないために、国債で運用するしかないのですから。
金融機関の間では「みんな大好き日本国債」という了解がなんとなくあるように見受けられます。
この方は恐らく頭が未だに金本位制なのでしょう。
ご存知の通り、現代は金を担保に通貨は発行されておりません。
国家や企業は、「永遠に存在する前提」で運営されています。
永遠に自国通貨建ての負債の借り換えを行っても良いし、日本銀行があるので返済を行わなくても良い存在なのです。
これは一般的には受け入れ難いことですが、通貨を発行できるということはこういうことなのです。
「返済されるという大前提」はこの「国家が永遠に存在する」という前提がなければ成り立ちません。
何故なら国家が亡くなれば日本円がただの紙切れになるからです。
むしろ国債(政府の負債は)は”返済されないことが大前提”なのです。というより返済という概念自体が必要ないということです。
うまい言い方が見つかりませんが「国家とはそういうもの」としか言えません。
プロパガンダ手法的には20点の記事
日本円が日銀に対する借用証書であることは間違いではありませんが、あえて説明していない日本政府と日本銀行の関係、通貨に対する担保の認識の甘さ、論点のすり替え、江戸時代の米取引に例える卑しさ、手形と日本円を同列に扱うミスリード、権威の活用、総合的に判断しての採点は、20点くらいでしょうか。
コメント欄を見て少し安心しましたが、記事に対する批判的なコメントが多くて嬉しいです。
日本人は本当に頭が良いと感じます。
個別のプロパガンダ記事としては20点ですが、これを大手のメディアで繰り返されることが問題であり、それによって国の借金が社会通念にまで昇華したのです。
しかし、この程度の記事で日本国民は騙せないところまできていることは素晴らしいことだと思います。
いつまでも日本国民を貧乏にさせたい財務省をはじめとする連中の嘘と化けの皮が剥がれるところまできているのです。