桜の会やサワジリ報道の裏で日米FTAが国会を通過し、元日に発効するという異常な事態になっています。
また、それに合わせてなのか12月4日に会社法の改正が成立しました。
参議院採決結果
この会社法改正の要点は、
(1)株主総会に関する規律の見直し
(2)取締役等に関する規律の見直し
(3)社債の管理等に関する規律の見直し
です。
表向きには、コーポレートガバナンスの強化、企業統治を高め、また経営の透明化を図り市場の信頼性を高めることで「海外からの投資を呼び込む」ことが目的とされています。
しかし、日米構造協議から始まり、年次改革要望書、新会社法創設、TPP、日欧EPA、FTAAPなどの経緯や情報を踏まえれば、この会社法改正がワンワールドの為の法改正ということが理解できます。
グローバリゼーションはヒト・モノ・カネの移動の自由化ですから、日米FTAに反対だが外資の受け入れを強化する法案には賛成という態度は、結局は新自由主義に賛成という意味になります。
この記事では、会社法改正と今回の日米FTAについて考えてみたい思います。
海外からの投資を呼び込む=外資の支配を強めるだけ
目次
「株主総会に関する規律の見直し」という点を観てみると、株主総会資料などを電子申請制度等、株主の利便性を図るためのものであると言えます。
しかし、株主利益の最大化という根本的な企業の存在意義を考えると、この株主総会に関する規律の見直しとは、「株主利益に資するための改正」と言わざるを得ません。
確かに株主の電子申請制度は株主、特に外資の利便性を図ることになるでしょう。
ということは、逆から観れば外資企業(多国籍企業)の日本市場に対する影響力が増大することになります。
というのも、外資企業が日本市場に対して投資しやすいと判断するということはあらゆる行政的手続きや書面準備等の手間が省けるということになるので、外資による日本市場の支配は固定化、少なくとも強化されることは間違いありません。
また、米国では以下の記事にあるようにこれまでのような株主資本主義、株主第一主義といった姿勢を是正する世論が一部形成されています。
このような背景から、投資家や投機家は「米国市場ではこれまでのような荒稼ぎがしづらくなる可能性がある。」と考えたらより、稼ぎやすい市場に資金を移動させるというのは合理的な判断でしょう。
つまり、この法改正は投資家、投機家の要請で行われた法改正であると言えるのです。
そもそもの目的が「外資を呼び込むため」ということなので、ある意味では当然ですが、労働者の賃金はこれまで以上にコストカットと効率化という名目で下落していくと予想できます。
コーポレートガバナンスの強化とは、株主資本主義の強化である
コーポレートガバナンスとは、
「所有と経営の分離という考え方に基づく企業経営を監視する仕組みのこと」
です。
所有と経営の分離という考え方は欧米から輸入されたものですが、この考え方は日本的経営の逆を行くものです。
所有と経営の分離の問題は過去に書きました。
所有権とは支配権のことです。
企業の支配権を細かく分け、その権利の多寡で支配が強いか弱いかを決めているものが「株式」です。
これを踏まえて、「取締役等に関する規律の見直し」、つまり社外取締役設置の義務化を考えるとこの改正は、「株主の代理人権限の強化」と言えます。
今回の改正で業務執行を社外取締役に委託できるという規定があるのは、株主の企業に対する影響力を強化するという結果になり、また企業内部の情報が株主に漏洩する可能性もあるのでインサイダー取引も誘発する結果となりかねません。
と言うより、投資家が確実に儲けるための制度変更という見方もできなくはありません。
インサイダー取引が違法ということはご存知の通りですが、私の知る限り、捕まらない人は絶対に捕まりません。
捕まる人は「インサイダー取引をしてはいけない人」に過ぎないのです。要は、”インサイダーじゃない人”です。
したがって、今回の法改正で行われることは、
「社外取締役=株主の代理人」
であり、社外取締役は株主利益を最大化するためのエージェントとして機能するようになるということです。
株主利益を最大化するために、その社外取締役はどのようなことをするでしょうか?
恐らく以下のことが中心になります。
「コストカットがしっかり行われているか?」
「株主利益を害する会計上の不正が行われていないか?」
「配当を増額させるための方策の推進」
「賃金カットの徹底」
この辺りはではないかと推測しています。
米国で株主第一主義に対して雲行きが怪しくなっているのであれば、多国籍企業が日米FTAで更に日本の市場を喰い物にしようとなっていると考えることができます。
日米FTAと会社法改正が軌を一にしたこともある意味では当然と言えるのです。
非上場の大企業も義務化
今回の改正では、非上場の大会社も社外取締役を義務化するとのことです。
”今回の”改正では非上場の大企業に影響はないという意見がありますが、これはいわゆる「ラクダの鼻」です。
上記のリンクに書いてあることは事実です。間違いはありません。ありませんが、今後どうなるかは説明されておりません。
今回の改正の非上場会社の社外取締役の設置基準は、
(1)監査役会を置き、株式の譲渡制限がない会社、
(2)資本金が5億円以上または負債総額200億円以上の大会社、
(3)有価証券報告書の提出義務がある
とされています。
会社法に限らず、改革と称しこれまで様々な法改正が行われてきました。
派遣法も最初は限定的でしたが、今はどうでしょうか?
つまり、今回の法改正は今後の規制緩和を見越した、「入り口」であり、今後様々なバリエーションでこれらの規制を緩和する方策を取られかねないのです。
譲渡制限がない企業とは、”譲渡制限株式しか”発行していないということです。
「種類株式」と言い、株式は様々な種類があります。
折角なのでご紹介します。
「剰余金の配当」
「議決権制限株式」
「残余財産分配」
「譲渡制限株式」
「取得請求権付株式」
「取得条項付株式」
「全部取得条項付種類株式」
「拒否権付株式」
「取締役、監査役の選任についての株式」
各株式の内容についての詳細はググってください。
いくらでも緩和する方法はあることはご理解いただけるかと思いますが、グローバリストの戦術は割とワンパターンです。
フット・イン・ザ・ドア、韓非子の「螻蟻潰堤(ろうぎかいてい)」、「小隙沈舟」という言葉がぴったりです。
日米FTA発効やTPPなど統一経済圏成立に向けた法整備
日米FTAについても、今回のステージで入らなかったものもあります。
ですが発効後に、第一ステージでは要求しなかった分野も要求するでしょう。
それは、第一ステージで要求するには世論の反発を招きかねないから忘れた頃にまた要求し、こっそり通せるように段取りを組むと考えられます。
TPPから米国は離脱しましたが、過去の記事でも書いた通り、FTAAPで参加すれば結局は同じことになるので、TPP参加を急ぐ必要はないのです。
その時の交渉で、参加国に対し一層有利な交渉条件を獲得するため緩和を要求し、”できるだけ奪う枠組み”を設定しているのです。
常に置き去りの労働者
さっさと現実を観ていただくしかありません。
眼を醒ましましょうとしか言いようがないのです。
更に生活は苦しくなるでしょうし、生活が苦しくなるならまだ良い方です。
まとめ
今回の会社法改正は株主資本主義を強化する為のものであることです。
富裕層にしかメリットはなく、労働者にはデメリットしかありません。
他の人も言っているとは思いますが、日米FTAやTPPなどのいわゆる自由貿易協定の枠組みと無関係ではないのです。
グローバリスト、支配層にすべてを奪われる前に。