最近、これまでほとんど取り上げられてこなかった物流業界の話題が多くなってきました。
先日は東洋経済から以下のような記事も出てきたくらいです。http://toyokeizai.net/articles/-/160315
これらの火付け役となった事件は昨年12月の佐川急便ドライバーの荷物叩きつけの事案でしょう。
上のリンクの記事にあるように他人事ではないというドライバーも多く、私自身100人ほどのドライバーに聴いてみたところ、また自身の経験からも、荷物を叩きつける行為は一度は頭をよぎることです。
以前私が書いた以下の記事で、ドライバーの苦悩や元請けの問題、経済の問題などを指摘しました。
佐川急便の荷物叩きつけ動画投稿に見る運送業の実態と日本の問題
また、日本国民全体がインフラへの認識を変えることや、デフレマインドからの脱却が重要であると認識しています。
ヤマト運輸のホームページから引用した以下の取扱個数の推移も年々増加しているのですが現実は
「物流崩壊」と銘打たれるほどの惨状となっています。
http://yamato-hd.co.jp/investors/kojin/yamato/index.html
通販業界の需要は高い
ECサイトなどの通販業界は宅配業者と切っても切れない関係となっています。
もちろんウェブ上で販売するわけですから、集荷し配達する存在が必要なわけです。
非常に当たり前のことを書いていますが、問題はECサイト側の需要が高いのにも関わらず、需要に応じて運賃が上がらない為に、末端のドライバーが割を食ってしまうというそういった話です。
また午前中、午後は2時間おきの配達指定、土日配達、当日再配などの無料サービスが過剰であることもドライバーが疲弊する原因のひとつでしょう。
更に私が以前担当したECサイトを運営する企業であったことですが、サイト側は消費者に対し「時間指定有料」「指定日配達有料」という形で利益を生み出しています。
宅配事業者の無料サービスを利用した稼ぎ方で、個人オークションなどでも送料で稼ぐという手法は昔からありました。
これはサイト側の問題ではなくビジネスをしていれば誰でもやるだろうということですから、宅配業者側が「やり過ぎていた」ということだと私は思います。
個人的な経験ですが10年前もドライバー同士で「こんなの奴隷じゃないか」と言っていたことを思い出します。
なぜサービス過剰となったのか?
いくつかの原因はあるかと思いますが、大本はデフレです。
荷主の運賃に対する値下げ要求と、運賃を下げない代わりに無料サービスを増やしていった経緯があります。
こうなることで「安くて良いは当たり前」といった思考が日本全体に形成されます。
次にインフラが少ないこと。過去の記事でも触れていますが、運送業の生産性はインフラの多寡や整備状況に深く関連しています。
荷物が配達地域に早く届かないことでの配達効率が下がるといったことも大いに関係します。
インフラが少ないことに関連して東京一極集中の問題も無視できません。
荷物が集まる場所というのは基本的に「人が多い場所」です。そこに荷物が集中するということは、例えて言えば
「血液が頭に集中する」のと同じことです。
極めつけと言ってはなんですが、少子化問題が人手不足の原因となっています。
出生率、出生数推移を見ても分かる通り、75年辺りから減少の一途を辿っています。
30年以上も少子化対策をしてこなかったわけですから人手不足になることなど考えれば誰でもわかっていたはずなのです。
運送業は人の生活に直結する重要で誇り高い業種であるにも関わらず、人気のない業種のひとつです。
その上運送業界の人達も自分の仕事に対して「自信を無くしている」ことが問題でした。
経営者レベルのマインドがそうなってしまえば必ず末端までそのマインドが伝播します。
金額を下げてでも、サービスを増やしてでも荷物を取ってくる!といった精神で営業してれば末端に負担が行くことは想像に難しくありません。
それらを考えればドライバーの人手不足は当然の帰結です。
以上のことが日本全体で行われているとなれば「なるべくしてなった」と言えます。
改善策はあるのか?
過去の記事も踏まえ原因を特定できれば問題解決の方法はあります。
パッと思いつくことは以下の事項です。
ミクロの視点
荷主の運賃を上げる
再配達の有料化
土日の配達を不可にし24時間受取窓口を設ける
消費者におもねる態度をやめる
悪質クレーマーには断固戦う
宅配業のイメージアップ戦略構築
マクロの視点
高速道路等のインフラ整備
少子化問題を一刻も早く解決する
人口の東京一極集中を分散させる
日本国民のデフレマインドの払拭
これらは最低視野に入れて考えるべきでしょう。
できるできないではなく、いくつか選択して行うかまたは一つずつ行っていくか順序はどうするかなど無数のバリエーションがあるので、PDCAを回して数字と結果を見て予め設定した基準でバランスさせていくしかありません。
また各企業によって事情も違うはずですからあくまで問題解決の総論として書いてみた次第です。
更に大手三社が上記のどれかを「やる」と表明することだけで消費者の意識は大分変わります。
私自身、経験のある仕事ですし、彼らの境遇や待遇を観ていて非常に悲しい思いをしたのでなんとかできればと切に願っています。
私はこのヤマト運輸の報道を観ていると今年中に大きな問題が「日本郵便」の都心エリアで起こると予想しています。