ヤマト運輸事案に見る世論形成のやり方

去年の年末の佐川急便の配達員の荷物叩きつけの事件から半年も経たずに、ヤマト運輸の労働組合による労使交渉に関する報道(荷受けの総量規制など)、過剰サービスの見直し、残業代未払いなど、一連の報道ここ20年で今ほど「物流」に対してのスポットが当てられることはありませんでした。

また集配ドライバーの苦労に焦点が当てられた報道も多く、消費者に対して物流の現実を訴えたような形となりました。

そして「27年ぶりの値上げ」となった一連の流れを、全体を通して観た場合、また世論形成のテクニックとして観た場合、非常に戦略的且つ、仮に値上げのための「情報操作」だとしたらかなりの高等技術のように思えます。

ただし、仮にこれが情報操作だとしても今回の物流に関する世論形成は”正しい”情報操作である私は考えています。

ここで言う正しいの定義は市場メカニズムが働いていなかった物流業界の運賃が是正される可能性があること、末端の労働者の賃金上昇に寄与する可能性があること、消費者の物流という安全保障に対する意識が高まること、デフレ脱却の引き金になり得ることなど、我が国全体にとって素晴らしいことです。

この記事では、今回の一連の報道が社会に与えた効果を考えてみたいと思います。

第一報の衝撃

これはヤマト運輸ではありませんが佐川急便の荷物叩きつけの事件は社会に大きな衝撃を与えたように私には見えました。

実際あの動画を見てみると、正に「ブチギレ」といったところで、テレビなどの主要メディアも取り上げていたこともあって、大衆の宅配便業界に対する関心を芽生えさせた事件だったように思えます。

佐川急便の件以前に他にもヤマト運輸や佐川急便、日本郵便に関するちょっとした記事はありましたが、一般消費者にとっては今ひとつインパクトに欠けていたのでしょう。

私も過去の記事で書いた通り非常に印象深い事案だったと思います。

佐川急便の荷物叩きつけ動画投稿に見る運送業の実態と日本の問題

物流戦国時代の終焉〜ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の未来〜

この事案の記憶が大衆に刻み込まれ、これまでさほど見向きもされなかった宅配業界に関する報道に関心が集まっていきました。

二発目の問題提起を投下する

次に問題視されたのは、通販サイトの莫大な荷物の個数とアマゾンの運賃と即日配達、再配達、時間帯指定などの過剰サービス問題です。

以前から宅配業者とAmazonの価格交渉は難航を極めており、佐川急便は撤退するといった選択をしていたことは記憶に新しいところです。

更にドライバーの過酷な労働環境や賃金が上がらないこと、慢性的な人手不足で事業自体が立ち行かなくなるのではないかとも感じられる記事や、ネットニュース、まとめサイトなどでも目立つようになりました。

また労働組合の荷受けの総量規制の要求、使用者側の要求受け入れ、過剰サービスの見直し、未払賃金精算など細かいネタがどんどん投下されています。

報道の流れ

大きな視点で現場の窮状の報道、過剰サービスの見直し、未払賃金精算、そして全面値上げという流れ。

全面値上げというゴールに向かって一連の情報を小出しに積み重ねていき、「物流」の問題を「社会」問題に昇華させることに成功したのです。

いきなり値上げの話をしても突っぱねられるだけですので、まずは空気を作り、消費者に少しづつ受け入れさせる世論形成から始めることで消費者は全面値上げを受け入れざるを得なくなります。

この”やり方”は戦後我が国がGHQに施された占領洗脳政策であるWGIPに非常によく似ているなと私なんかは感じました。

ゆでガエル現象という有名なエセ科学の例え話です。

要は一気に変えるのでは無く、小さいものから受け入れさせ徐々に大きなものにシフトするやり方です。

これは気付きにくいものです。

日本国民の中にもこれに気付いていない人は大勢いるはずです。

仮にAmazonに対抗するために値上げを受け入れさせることを目的としていたとしたら、恐らくメディアとの連携は取れていた可能性は極めて高いと言えるのであろうと思います。

東洋経済が特集を組み、連日何かしらの宅配業界の報道に焦点が当たると穿った見方をすれば、

連携している」と言えるでしょう。

とは言え、これを機に全面値上げの空気が醸成されれば、ヤマト運輸が値上げする、佐川急便はAmazonの荷物を受けない、日本郵便に多くの荷物を回しても同じ問題が発生し、サービスは維持できない可能性が高いとなれば、Amazon側も値上げする、消費者は受け入れざるを得ないという構図が出来上がります。

私は日本郵便は今年中に何か大きな問題をやらかすような気がしてなりませんが…

それはさておき、今回のヤマト運輸の件は、日本全体にとって非常にありがたいことです。

仮に今回のヤマト運輸の一連の報道が計画されたことであるとしたら、情報操作手法が公的な目的のために使われた数少ない例と言えるでしょう。

日本の人手不足、生産年齢人口比率の低下は最低でも18年くらいは解決できないでしょう。

この件から、日本全体が値上げをしていく空気ができ賃金が上がり、これまでのような人件費を犠牲にした価格競争に終止符が打たれることになると期待します。

そういった企業は生き残れなくなりますし、従業員に見捨てられたら企業は終わりです。

時代は変わりました。

今回の件のメディアには以下で書いたことの一部が使われているので参考までにどうぞ。

メディアの情報操作手法を公開します

 嘘を見抜く方法~正確な情報の掴み方~

「事実」はこうして作られる~既成事実化~

 洗脳はエンターテイメントの顔を持つ

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